Tri Plane Hull
2022.09.08

トライプレーン・ハル、これエムズではよく出てくるワードで、ショップでも説明を求められることがちょいちょいあるから理解している方もいますね。

また近年、ディスプレイスメント・ハルの拡張と共に聞こえてきた言葉でもあるのでハルのボトムデザインの1種というところ、つまり全体像までではないけれど同じ言葉が表す一方の意味、まで知った方もいるでしょう。

私はこちらエムズのサイトはもちろん、ずいぶんと前からいくつかの雑誌などでもサーフボードについての突っ込んだ特集執筆を依頼される中で、ディスプレイスメント・ハルの詳しい話も何回か書きました。
で、エムズのサイトやそれらの記事の中でもトライプレーン・ハルについて説明しているので、可能ならそれらのバックナンバーなどを探していただけるとありがたい。

ところが最近、CI社が同名のモデルを宣伝していることもあって、"あれはハル(ディスプレイス・ハル)なのか?"とか、"写真を見たらコンケーブなんですが?"、といった質問が時々あったりしてちょっと混乱があったり。
混乱そのものを私が整理する役割ではないのですが、以前説明した人の中には一方の意味までで話が終わっている方もいて、よくわからないから教えてという要望もあるんです。

で、ハル、という言葉そのものが船底だったり船やボードそのものを言っていたり、サーフボードではボトムデザインの種類であったり、さらにはサーフボードそのものをハルと表現するケースまであるのでハルという言葉がそれらのどれを言っているのかを上手くキャッチしてくださいね。

まずトライプレーン・ハルというものの全体像を簡単に。
早い話、ボトムの面構成が3つに分かれているもの、ということです。その分かれている様子はわりとパキッと明確だったり、一見するだけでは不明瞭だったり、色々なデザインがあります。

ディスプレイスメント・ハルで知られるようになったトライプレーン・ハルの場合は、ボトムの断面形状で見てオリジナルであるドーム状を台形状に3面構成に置き換えたものと考えてください。
この場合でも多くの場合は、台形によって3分割された面は平らな3面というよりもそれぞれが穏やかなカーブを持ったものが多いですよ。

ではディスプレイスメント・ハル以外では、と言うと。
ボトムの両レール側とそのインサイドパートに別々の役割を与えたタイプが多く見られ、そのそれぞれのパートやパートの一部などにコンケーブが与えられているものも多い。
で、CI社のそれはまさにこのタイプです。ですからそのほとんどのモデルがコンケーブとそのバリエーションを用いたデザインとは違って、特にターンとその流れの中にコントラストのある動きと変化を持つことが多く、それこそがこのデザインのフォーカスでもあります。

このタイプ、実はすでに70年代にはシーンに登場していて色々なシェイパーがトライしていますし、良いものも多かったのですがその後はVEEが主役になっていきました。
CI社でも70年代に同名のシングルフィンをリリースしています。
面白いことにCI社ショートボード・シーンがスラスターの完全支配下にあった90年代にも、スラスターのトライプレーン・ハルをモデルとしてローンチしましたが一部の好き者が少し反応しただけで多くのCIファンでもほとんど目に入らなかったモデルでした。

てなわけでそのようなタイプのトライプレーン・ハルは、上でも説明したようにサーフィンの流れの中で特に一つ一つのターンの動きとその感触に作用します。

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さらにひとつの例を紹介すると、EISHIN Twin Chin / ツインチンもトライプレーン・ハルです。
今日紹介している写真でもよくわかるように、アンダーレールにシェイプされたコンケーブを持つパネルはチャイン(峰)によってセンターパネル・パートと分けられて、3つのパートに分かれます。

このモデルを紹介するときにはいつもお話ししますが、その機能的・感触的コントラストはとてもダイナミクスのあるものでこのコンセプトの特長を最大化した素晴らしい板です。

トライプレーン・ハル、ちょっと分かりやすくなりましたか?