2022.07.02 UP DATE
掲示板

少し前に届いた、サーファーズ・ジャーナル日本版のイシュー12.1
 今日はこちらのサーファーズ・ジャーナルからヒントをいただいて。

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私は本国版・日本版とも年契で取っていますが、日本版は数ヶ月遅れで発行されて届くようになっています。この号の本国版もしばらく前に見ていて隅々までとはいきませんが興味のある記事やよく分からない記事なども先に読んでいて、特にメイン特集のデビッド・ヌヒワはカバーも飾ってとても読み応えのある記事です。

しばらく後でも日本版が読めるのはとてもありがたくて、筋金入りのサーファーである日本版編集スタッフによる的を得た翻訳で読み直すと、あー、ここはこういうことが言いたかったのね、みたいに自分が至らない読み解きを補える。

サーファーズ・ジャーナルは1992年の創刊号から読んでいて、日本版も発行されるようになってからは両方です。
日本版は本国版の内容にプラス日本国内の独自記事を加えて、もともとのサーフィン界随一であり唯一のピュアなサーフィン誌と言える存在をさらに日本のわたしたちが読むことができる本当にありがたい本。
エムズに来てくれるお客さんたちには、発行元に簡単に申し込めて家に送ってもらえる年契をお勧めしています。

この翻訳版に発行国の独自記事を加えるというスタイルはフランスでも発行されていて、先日はファンタスティック・アシッドのトリスタン・モースが特集されました。

そのTSJ(ザ・サーファーズ・ジャーナルですな)、発刊当初は1992年という時勢もあってロングボード周辺の特集や記事を中心に最初から濃い内容が展開していました。
当時、アメリカ(というか、カリフォルニア)では老舗のSURFER / SURFINGという2大誌に加えて80年代から高まったロングボードの復活状況によって、LONGBOARDERからその後LONGBOARD MAGAZINEへとタイトルを変えたロングボード・サーフィン誌が勢いを増していた頃でした。

発行人のスティーブ・ペズマンさんもロングボード時代からの大ベテランですから、当時のTSJがロングボード・サーフィンとカルチャーをディープに取り上げていたのは当然です。
スティーブ・ペズマンさんはデイルさんの集まりの時に紹介してもらいましたが(覚えてないだろうなあ、あちらは)、やはりデイルさんのクルーでもあってそのような集まりの音頭を取ったりするとも聞きました。

時勢を捉えた編集内容は単に流行りスタンスのトレンドではなく、サーフィン界の隅々までを知った編集陣によるまさに良質な内容と写真で埋めつくされるのです。御用記事、もちろん無し。
ですからボリュームのある特集記事から、巻末の小さな記事まで、楽しめたりハッとさせられたりします。

さて今号では特に巻末の小さな記事の中に膝を叩いて同感する記事があったので、私の解釈と感想を加えて紹介します。

すでに書いたようにメインの記事、ヌヒワさんの特集は読み応え抜群で、ヌヒワさんについてなんだからきっともっとたくさんのページが必要だったところを苦心してこの量に収めたんじゃやないかしら。


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で、紹介するのは巻末の、Bulletin Board / 掲示板・The Archivist / アーキビストの二つの記事。

掲示板は、親愛なるサーフボード業界の皆さんへ、というタイトルで本文はこんな一節で始まります。
"ろくでなしたちが仕組んだサーフボードのモデルに関する浅はかで作為的なトレンドを少しでも抑制することはできないだろうか?"

私、本来これを担うのはサーフショップの役割の一つだと思っています。
ただやかましいだけではいけないし、独りよがりでもいけない。その上、サーフショップにはそこで売る板を選択する胆力が要るし向上し続けなければいけない。
エムズでも私は恥ずかしい思いをしたり反省したりすることを長年繰り返しながらでも、その道の何処かにはいると信じて学び続けます。

その点において秀でたサーフショップもちゃんとあります。

一方で売れ筋印象付けをした商品構成拡大とも言えるような、クロージングストア的セレクトショップ指向も見かけます。
ここで言う、売れ筋印象付け、は掲示板で触れている"〜浅はかで作為的な〜"です。
これは昔は一部のメーカーが仕組んだりしたことでした。

本来サーフボード・デザインは広大な世界。それを歓迎するサーファーばかりではないと思うけど。
デザインの起こりも作者によって様々なのです。知れば知るほどそれを誰かに説明することはどんどん難しくなる。
ショップでお相手するお客さんが初心者ならそもそも選択肢はかなりシンプルなので、適切な判断と板のクオリティのバランスを最大限良いものをガイドすることがフォーカス。
本来のそこにある、シンプルとは対極の深淵な世界まで説明する必要はないでしょう。

だけどショップに来てくれたそのサーファーが、サーフデザイン本来の多面的でユニークな拡張性と広大さを知ったり少しでも勘づいた人になら、引き出しの中から何をどう選び出してガイドするかはそれはそんなに簡単じゃない。

そこに目をつけた"ろくでなしたち"は他の誰かが生み出した優れたデザインをまあまあ真似をして、あるいはそういうものを探し出して"売れ筋印象付け"をして"トレンド"指向の消費者たちを膨らませていく。
そもそもトレンド指向の消費者は最初からマジョリティなのだ。

そういうサークルに物足りなさや違和感を感じて、私たちを頼ってきてくれるみなさんは大歓迎だし、正直嬉しいものです。

ところでその"浅はかで作為的"の何が問題かというと、そのトレンドってやつのネタにされるサーフデザインはユニークなだけでなくとても機能的なものが少なくなくて、それを生み出したあるいはステージを引き上げるデザインを世に出した製作者は"トレンド"による報酬がある程度もたらされる場合もあるけれど、それ以上に実態の見えにくい搾取に遭っているようなものでもある。

そういうことがあまりにも繰り返され過ぎると、真のクリエイターたちは相対的に消耗するでしょう。
サーフショップが学び続けて板を選ぶ役割をしなくなれば、クリエイターたちが作るサーフボードを求めるサーファーたちに応えられる場とチャンスが一つ減るじゃないか。


もう一つの記事、The Archivist / アーキビスト
こちらではポール・グロスについて触れられています。
本文中にもあるようにポールさんはグリノーさんとの盛んなデザイン交流・交換が知られていて(知られて?、いないね)、同じく本文中に写真とともに出てくるトム・ガグリアが抱えるポールと共同したデザインの1本であろうベリーボトムのピンテール。

記事は、この時代を牽引したアンダーグラウンドシェイパーたちの取り組みを物語っている、と話を結んでいる。
これがこの時期のマリブでもリンコンでもなく、ホノルアベイ。
この時代のサーフデザインの旅行者たちの足元にも及ばないな、私。

それにしてもこの写真を撮ったロン・ストーナー、私は大好きでいつも思うんだけど、この写真とバックストーリーには大した際どさだって含まれているはずなのに、いつだって波乗りの楽しさを優しく感じさせられるのは私だけか?


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もう一つ、記事をご紹介。それは編集後記。
実際のところ面識はないのですが、私たちの属するシーンの尊敬するリーダー・識者である井澤聡朗さんの筆によるページです。
タイトルは、ズバリ孤高のアウトサイダー。

今号の編集後記で氏が語る事柄は、現在のいろいろな意味での窮屈な空気や状況の下では、ましてTSJという本の中ではセンシティブで気を遣う話題だと察するのですが、リーダーは思いのたけをぶちまけてコントロール不全に陥ってしまったと書かれている。

そのおかげで私もここでの話を書くキッカケ、小さなこれらの記事が偶然にも含まれていた今号。

何か物足りないって感じている皆さん、ぜひ当エムズをお訪ねくださいね。

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