あいかわらずアシッド、どのモデルにもちゃんとサーフデザインがあってそれらはどれもトリスタンがイメージしたコンセプトに到達していて、それはとても素晴らしいことです。
ちょっと変わった名前が与えられたこのモデル、マイカルPと呼びます。
以前からこの板を紹介する時に登場するキーワードは、マイケル・ピーターソン(MP)。てえことは、マイケル+ハル+ピーターソンで、マイカルP。
MPは70年代に世界に大きな影響を与えたサーファーで、サーフィンそのものでもサーフボードデザインの分野でもあちこちでMPの2文字は登場します。
写真でもビデオでもMPの最もアイコニックなシーンとして知られる、例のホローなセクションを駆け抜けるスピードとセクションの切れ目で繰り出すカットバック。
その時の板はいわばスタビーカインドのアウトラインが見てとれるんだけど、実はMP、彼が輝いたあの頃には実験的なものも多く含めてとても色々なコンセプトのデザイン・シェイプを繰り返しています。
ですから一言でMPインフルエンスというような表現がされていても、それがどこを指しているのかはさまざまなんです。
アシッドのマイカルPは、まさに例のシーンでサーフした板のデザイン志向をトリスタンが再解釈したものと言えます。
ボトムデザインは比較的穏やかなベリー(ハル)からVEEへと変化してテールへと抜けるものでレールデザインも現在のダウンレールにも続くタイプのフォイルですが、この組み合わせはシーンに広く定着するまでもなく、その少し後にはベリーはフラット系パネルに置き換えられてツインフィンからスラスター初期のデザインに吸収されていきます。
トリスタンはアウトラインには違うアイデアを組み合わせていて、ご覧のようにアウトラインのどこかに強いコントラストが無くそれでいて気をつけて見てみると、ノーズはポイントを持ちつつ細すぎず、テールもダウンレール x VEEのシングルフィンにとっては程よいエリアを持ちます。
これはむしろ、トリスタンがこの板にイメージしたサーフデザインに伴うレールとボトムデザインから導き出したんじゃないかとも思われます。
ちなみに今日ご覧いただいている板は長め、8'2"です。
モデルとしてのサイズレンジは6台から8台中盤というところで、結構対応幅が広いでしょう。
そしてこのモデルの波乗りのイメージとサーフデザインは、板の走りはディスプレイスメント・ハルの重力と水の抵抗から放たれたペネトレーションと伸び。
ターンではキャラクターを変化させて、やや早めに始まるVEEパネルによるとても滑らかなトランジションからの綺麗なリリース。
そのVEEのピーク位置とフィン・セットアップはカットバックでのピボットな操作にも応じやすいから、クイックなきっかけにもリラックスしたフローにも繋がりの滑らかな動き。
つい数日前の朝の波乗りはここんとこのスモールサーフ、せっかくのゆる〜いオフショアは思ったよりも早くサイドオンに変わって潮も悪いタイミングへ、そろそろ上がろうと思っていたら友人に遭遇。彼がこのモデルで波乗りしていたからちょっとだけ貸してもらうチャンス。
私も下ろしたての板だったから交換して15分ばかり延長。
この板ね、ただ腹ばいになっただけで扱いやすさが分かる。だからパドルも素晴らしく自然。
いい板、テイクオフはもちろん早いんだが、走る方に目を向けただけで板が着いてきて、そのまま立って滑り出しのスピードも落ちない。ブレイクの始まりの形が良ければ最初のボトムターンがニヤニヤでしょ。
トリスタンがこのモデルのためにデザインしたフィンもまた、あからさまにフィットしていて、例えばだけど私のようなスタンスの狭目なサーファーでもこのモデルらしいややテール寄りのスタンスポジションに自然と呼んでくれます。
ちょっと見には特別な変哲無さそうな姿をしておいて、乗れば描かれたデザインと洒落た乗り味がスルッと乗り手に伝わる内緒で(ちょびっとだけ、やらしい?)いい思い系モデル。
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