この板の話をしよう
2025.03.31

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PAVEL, 6'8" New Otter Twin 6channel ストックです。

 ちょうど昨日、この板について相談されたのでピックしましょう。ぜんぜん違う板だけど、話の流れの中で同じくチャンネル・デザインのPAVELクリンカーについても質問されましたが、そっちは次で話しましょう。

で、この板、ニューオッター・ツインは、6チャンネルのバージョンです。
シンプルに言えば、ニューオッターはPAVELの超豊富なラインナップの中で、波にもサーファーにも全方位を強力にカバー・サポートするミッドレンジのモデルです。

それだけじゃ話の中身があるような無いような、サーフィン本のカタログ集やショップの見習いスタッフの話みたいだから、ホントの中身はこれから話すとこ。

全方位と言うと、まるでよくあるオールラウンダー、なんやらミッドみたいなくくりに入るみたいですがそれは違います。ソレは軽く含むけど、こちらはそれらには囲いきれないサーフデザインです。

このモデル、まさに全方位で、波もサーファーも選ばないのは当然としてそのサーフボードとしての機能や要素を分解してみます。

波・ブレイクのタイプ・サイズ。
つまり例えば掘れる・掘れない、速い・トロい、変化が多い・少ない、スロープの性質、オフショア・オンショア。そのいずれの場面でも板から伝わる感触がばらけない。

サーファーの方はどうでしょう。
これを言う時、単にキャリアだけでは見通せないものだけど、この板の場合乗り手のスキルやダイナミズム、サーフィンの表現性の豊富さ、色々な波に対する体験値、それらへの満足度のバンドが広い。
で、この点は乗り手がこの板に慣れるに従ってそれぞれのサーファーの波乗りを向上させてくれる(教えてくれる)という特質でもある。

これらのいくつかの特質の、それこそ質がとても高い、というポイントが全方位でありながらこのモデルの強烈な個性なのです。

一般的にはオールラウンダー的なくくりの板では、ほどほどにバランスさせることがデザイン・シェイプの技術的ハードルであることが多く、それがクリアされれば"調子いい"となるものです。

知っている人は知っている、リッチ・パベルの板はそこは中間点であって、波乗りの中にあるそれらの各要素が時々爆発、大化けする。そのゲインがまたデカい。
そのパベル・ノートがこの全方位デザインにもきっちり与えられています。

さてこの1本は6チャンネル、そして"ツインフィン"。
同じこのモデルのチャンネル版でも4本もあれば、この板の6本もある。
もちろんどちらが良い・優れる、ではなくて性格・コントラストのポイントの違い。

ニューオッターのチャンネルは基本的にもともとオッターが持つボトム・デザインが優先されて、その基本レイアウト上にチャンネルが施されます。
ちなみに例えば同じ6本でもチャンネルの長さや位置関係でさえ、リッチはそれぞれの個体に与えたい機能性とキャラクターによってデザイン・アジャストします。

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この1本に戻ると、この6チャンネルでは板の走りの速さが乗る始まりが早く、そしてより伸びを求める仕掛け。

ボトムの基本レイアウトはノーズから、わずかな(スライト)シングルコンケーブ、さらに中程度の深さのシングルコンケーブがチャンネル・アリアへと向かう。
コンケーブのボトム左右方向フェイズは、コンケーブ内の最低圧パートがチャンネル幅に明確につながる仕掛け。

ボードセンターから後方、チャンネルによって目眩しされるけどコンケーブに重なるパートは言わばダブル化する。
フィンエリアに向かう比較的短い長さの間にその変化が起こり始めて、フィン間近になってスライトVEEに変化してさらにその中のコンケーブ状のリッジレベルにセットされる。
ここいらへん、ちょいとややこしいでしょ。
で、VEEのフェイズはナチュラルにテールエンドに向かいます。

ここで一度フィンを見てみると、おやコレ、ダブルフォイル(両面フォイル)じゃないの。

レールライン(エッジライン)はそれらボトムのレイアウトに対してナチュラルなカーブでテールエンドに集結する(なっちゃった系、なりでそうなった式とはまるで別の話)のだけれど、このフィンとテールエリアのデザイン・コンビネーションによって、しなやか・とても柔軟なボードエンドの操作感覚を持たされているのです。

ここで両面フォイルの"ツインフィン"との辻褄と必然性が揃うわけです。

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それだけじゃなくて、このテールエンドのレールはちょっとだけスクエアなパートが作られて、それはせっかくの高速ゲイン志向のターンのまとめにダッシュやスナップを作ります。

どうでしょう、全方位を決して平板なサーフデザインにしない、ならないのがPAVELというわけです。

ちなみにこれらのデザインとサーフィンの仕組みは私がいつもリッチから聞き取ったなかなか難しいインストラクションを、これでもイメージしてもらいやすいようにお話ししてみています。
大変なんだからホントに、全部のデザインのレッスンは。

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