今日は小話
2023.09.05

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小噺じゃないから特に笑うところはないのだけれど。 小さいけど、すごい!、っていう話です。

このなんだかただのノーズの写真、とても小さなビークです。イーグルノーズなんて言うことが多いかもですね。
つまり、私たちはこれをマイクロビークと呼びました。

普通ビークノーズはもっと、やや大げさ気味に大きく造ることが多いですが、これの起こりは70年代。
主にボードのレール全周にわたるローレールとの組み合わせで、ノーズまでそのフォイルラインが集合すると自然とこのチップ形状にもまとめやすかったことがあります。
もちろんシェイパーのデザインやアウトラインとフォイルの選択も含めて違うチップもたくさんありました。

とは言え、そのある時期に流行ったチップ形状でもありましたが、時のトレンド(あ〜、いやだ)が短いツインフィンに移る頃にはノーズの独特の重ったるさになることもあり廃った、と。
もちろんその後のトライフィン時代を通してもですね。

で、ビークノーズは、いわばオルタナティブの台頭をきっかけに、よくレトロシングル(あ〜、いやだ)なんて呼び名をつけられる板に一つのアイキャッチ的な役割も持たされるようにして、また見られるようになりました。つまりここは装飾的なデザイン選択とも言えます。もちろん、悪くありません、シンプルにかっこいいのもあります。

ところが、話、前後しますが、実は80年代にその手を引っ張り出したシェイパーがいました(厳密には一人じゃないんですが)。
ショーン・ステューシーです。
彼のシェイプの人気(もうここは、人気と言っていいでしょう。彼のその後のクロージング業の繁盛ぶりを見ればわかりますね)が出た頃、ツインフィン全盛からトレーラーが付いたりそしてトライフィンの天下へとという頃。

ほとんどのシェイパーが板の頭を軽く、そしてそう見えるようなデザインを選択してる頃にショーンはあえて結構目立つビークノーズを見事にツインフィンやトライフィンにフィットさせました。
そりゃかっこ良かったですよ。私も少し手に入れてお気に入りでしたもの。

それもそれほど続かず、というよりも続けずにショーンの板は見なくなったのは、そりゃもう服の商売が爆発したからだと思います(世界中を席巻しましたから)。
彼の目の付けどころはいつもしゃれてます。

で、今日お見せしているPAVELのあるモデルに施された、マイクロビーク。実は今回シェイプしたこのモデルの全てにこのチップを組み合わせたわけじゃなくて、リッチのいつものアイデア展開と創造性が表されて、なおかつそれはデザイン&フォイルの必然性ともリンクしたんですね。

だからこの2本のシェイプを進めていたある段階でリッチは、"ねえこれビークにしようと思うけど、どう?"、なんて訊くから、もちろんそれいいじゃん!

で、出来上がったこれを見て私は2度驚いた。
アイデアを聞かされた時に、フォイルから見てとても控えめな大きさのものになるよね、と私は思いましたが、なんとここまでデッキのフォイルを追い込んでからこんな小さなスペースにビークを造っちゃうなんて、リッチは悪いヤツ。

つまりビークにしなくたっていくつも手があるのにわざわざこの選択ですから、ここでは機能的な必然ではなくてちょっとしたエンタメ。
それも超ハイテックな。

あのですね、けっこう削る人ならこの小さなビークを表すことはできるでしょう。ところが板をずっと尻の方から眺め上げてきてこのチップを見せられたらですね、もう途中で予感していたと勘違いするくらいの見事な表現のつながり(ラインの繋がり、なんてのは当たり前)。
その上での、マイクロビーク。

リッチ、さすがに言ってましたもの、簡単じゃないよ〜ん、て。

この板、次は出来上がってからお見せすることになりますが、ものすごくカッコいいから。
だけじゃないけど。