ここ1.2年、アシッドのフレックス・スプーンにアクセスするサーファーが少しづつ増えています。もちろん、そのうちの多くはニーボーダーなのだけれど、普段はスタンディング・サーフィンをするサーファーにも広がりつつあることに注目しています。
SPOONに関心を持ったことがあるサーファーは知っていることですが、このデザインとボード・コンストラクションはジョージ・グリノーによって開発されたもので、ニーライド・サーフィンの愛好家たちの中でもごくわずかな人たちがデザインをシェアしてきたもの。
それだけに絶対数はもちろん、クオリティの高いSPOONを製作するビルダーはごくわずか。
近年(もちろんコロナ禍による3年間を除いて)ファンタスティック・アシッドのトリスタンは地元フランスと近隣のヨーロッパだけでなく、カリフォルニアやハワイでの出張製作では少ないとはいえSPOONのカスタムオーダーが少しづつ増えているのです。
今年5月にトリスタンは日本にも戻って、私たち山王ファクトリーでの来日製作をしますが、実は私たちの元にもSPOONのオーダーが入っています。
私の数少ないSPOON体験の記憶では、フォームをシィエプしてグラスした普通のニーボードに比べてまずはパドル(実際にはビィーテイング、つまり足ひれによる推進がメインである)もテイクオフも独特のスキルを要する。
SPOONは浮力がとても少ないのですが、ノーズエリアと両レールサイドにフォームが残されているのでそのエリアのみ若干の浮力がある。
実はちゃんと慣れているサーファーにとっては、テイクオフも決して難しいことではないのですが、なにしろ十分な浮力を持つサーフボードでサーフィンする者にとっては圧倒的に小さい浮力そのものにびっくりすることから始まる。
ところが一つヒントがある。桐板などのパイポ・ライド。
一般的にはそれすら馴染みのない人がほとんどなんだが、私や私の周辺には時々パイポで遊ぶというサーファーはボチボチいるんです。
で、そのようなパイポでは、これはもう浮力ゼロに近い(ちょっと極端だけど)んだけど、ビーテイングに慣れて仕舞えばこれはさほど苦にならない。
だからSPOONの基本機能(ビーティングによる移動やテイクオフなど)は、上で書いたようにノーズエリアやレールの浮力があることを思えばパイポよりもずっと楽なのである。
しかも同じ桐板でもアライアでのスタンディングの難しさと比べれば、SPOONのプローン(腹ばい)でのビーティングとテイクオフしてニーリングまではそれほど難しくない。
なぜ、SPOONはメインのプレーニング・サーフェイスが積層グラスパネルで出来ているのか。
答えはトリスタンがあえてフルに、FLEX SPOONと名付けていることが言っています。
フレックスが示すように、SPOONはフレックスします。両サイドにフォームが残されグラスされているとはいえ、縦方向のフレックスも、ましてやねじれ方向のフレックスはポジティブ。
SPOONは速くて自在なターンを備えているのです。
上で書いたようによく出来たSPOONは、そもそも探し出すことから困難なところに持ってきて、アシッドのシェイピングツアー先ではチャンスがあることで、つまりトリスタンのフットプリントに沿ってユーザーが(あくまで少しづつ)増えてきたわけ。
SPOONは決して広く"流行る"ものじゃないけれど、ハマると深い。