もひとつオマケに、V-Bottom
2020.06.15

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トリスタンから面白い写真が届いたので、アシッドのV-Bottomを別な方向から説明を足してみましょう。

トリスタンの本棚には学者さんのように色々な本が並んでいますが、その中にあるミッキー・ムニョスの本の1ページ。
ムニョスさんが1968年に訪れたオーストラリアで、ボブ・マクタビッシュさんが見せているV-Bottomのボトム写真です。
ちょうどいい影を見せる角度で、マクタビッシュ・VBのコンセプトがよく分かります。

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エントリーから入る強いVEEはストリンガーをはさんで、今で言うコンケーブ状のチャンネルからテールのVパネル・アウトに抜けています。
このシェイプでサーフするマクタビッシュさんやナット・ヤングさんの古い写真(みなさんも一度は何かでみたことがあると思うのですが)、それはもろにフルレールのボトムターンですが、このデザインのサーフィンがよく分かります。

少なくともハイスピードで板が走っている限り、ほとんどノーズに近いレールが波に食い込んでいても、エントリーから始まるVEEとセットのコンケーブがリフトを生んでドライブは持続するでしょう。
回転性は(つまりボトムターンのリリースは)テールに向かうやはり強いVEEに依存しますが、それにはボード前半に施されているコンケーブが同時に持つ強いバイトをなめらかにはずす上手なコントロールを要したでしょう。

つまりボトムターンをリリースしてトップに向かうターンへのトランジションのコントロールをしくじると、特にサイズやパワーのある波ではとたんにテールがスピンアウトするというアクシデントに見舞われるといった、当時ハワイでのビッグサーフでのリポートがうなずけるわけです。
まあそういう波での話は我々アベレージ・サーファーには縁遠いのは言うまでもなく、50年前とはいえ今の水準で見ても超ハードコア・レベル。

この写真からもトリスタンは閃きを得ています。
彼自身のデザイン・コンセプト、強烈なディスプレイスメント・ハルを具現化するファンタスティック・アシッドのデザイン性と融合させたのが、Fantastic Acid, V-Bottomというわけです。

彼はボード前半にとてもディープな彼独特のディスプレイスメント・ハルを、ボードのほぼ後半には長いVEEパネルをコンボしました。
もちろん、その間にはその大きな面変化をつなげる見事なトランジション・エリア。

アウトラインは見ての通り、細身のノーズととても広いテールエンド。

細めのノーズは、ボトムの妥協のないハルにプラス、Sデッキの代わりにデッキのダウン・ノーズロッカーの協調によって、スイングウエイトはものすごく軽く押さえています。

深い位置から始まる控えめで長いカーブのテールロッカーと、テールエンドに向けてどんどん大胆に角度を増す超ディープなVEEパネルは、ターンそのものと波が作り出す流動の立体性によって実に高い回転性を得ます。
これは流体である波と水が、形状が変化しないはずのVEEパネルと、動性において入れ替わったような効果とも言えます。

で、ディープなVEEのスピンアウトはどうなるの?、という疑問が出てきます。だってノーズは廻りやすくテールは特大じゃないか、と。

トリスタンはデッキのテールエンドにこれもまた特大でとても深いV状の谷を掘りました。
ターンで深く水に入るテールに掘られたこの谷にはテールを抜ける水が常に強く導かれることでテールデッキを強く抑える力が働き、独特なテンプレートと超ディープなフレックスを持つ大きなフィンがボードから離れた位置の水を捕らえつつ深くしなってなめらかなカーブと同調し、同時にテールを水にとどめる仕掛け。

しかもボード前半のディープなハルはターンの起動と同時に、連続したなめらかなリフトを生み出すので、それがさらにテールを押すバランスとなり、軽くすばやく廻る回転性とターンのリリースのトランジションのコントロールを容易にしてくれる。

そうして、私が勝手に、ディスプレイスメント・Vボトムと呼ぶこの板が出来ているわけです。

板の全長に対してとても小さな操縦席に乗って(操作のためのスタンスが小さくて済む、という意味ですけど)、ターンの意思と操作をより積極的にとりおこなうほどユニークでドリーミーなサーフィンを楽しめます。

ちなみに次回入荷のカスタムにはお馴染みさんのフィンレス大将のVBも届くので、攻めた悪いサーフィンではどんなことが起きるのかも楽しみです。


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