トリスタン・モースのファンタスティック・アシッドから、ニューモデル!
こいつはこっちのページ、backdoorで話しましょう。手を抜いてたわけじゃないんですが、とても忙しい状況続きだったものですから、というのは本当なんだがまあ言い訳です。
エムズが預かるブランドたちからは今までにも、ハルとフィッシュをコンボするアイデアや実際にモデル化された板たちをお届けしています。
それらはそれぞれ作者たちの色々な角度や視点でのコンビネーションがなされていて、同じように呼ばれたり名付けられたりしても姿も波乗り感触もまるで違ったものばかりです。
今日紹介するファンタスティック・アシッドのフィッシュ・ハル、ずいぶんベタに呼んだものだが、ここでの"フィッシュ"は我らがリッチ・パベルが標榜する本物のFISHとは、その名を持ち出す視点がちと違う。
つまりアシッドの存在理由そのものであるハルの持つデザイン要素の中でも波乗り感触を決めてかつ大きく左右する、ボードデザイン・シェイプそのものに与える動的要素がストレートにフィッシュ・魚の動性にかけている。
FISHにはもちろんその動性がデザインに含まれているのですが、リッチによればフィッシュと呼ぶ最も重要なデザイン要素は別にある。
そういう意味で今日紹介のFISH HULLのフィッシュはストレート。
トリスタンがこの板を発想するきっかけのひとつには、かのミランドン・ブラザースのツインピンがある。
オルタナティブ歴(笑ってもらうとこです、ここ)がある程度長い人ならご存知、そして私のような歳になると15年くらい前なんてのはそんなに昔じゃないんもんで、"前にさんざん話したじゃん"とか思っても意外なことに知ってる人の方が少ないじゃないの、なんてことはザラで、ですから今日のところは少しだけ説明しときます。
ミランドン・ツインピンは1960年台の後半に、かなりローカライズされたアイデアとデザインとしてリリースされた。
時はまだロングボード時代、彼らのホームであるブラックスは大きくなると独特でヘビーなブレイクで、そこでのスピードとチャージをイメージして発想されたのが、深く切れ込んだ2つのピンテールとそれぞれにセットされた2本のフィン。
このデザインがデカくて水量も多く、さらにはとても掘れたハイスピードサーフのクリティカルなハイラインをメイクする新しい武器としてブラックス(少なくとも2000年代を迎える前までのブラックスという響きは今のそれでは無い、っていうのも知らないままでは??かな、と)のローカル達に支持された。
このコンセプトはミランドンさんの甥っ子であるイーライ・ミランドンの手によって、全くモダンにアップデートされて復活された。それがかれこれ15年ほど前あたり。
ちなみにイーライは素晴らしいサーファーで、例えば今人気の誰それたちと一緒に取り沙汰されても当然と言えるほどのスタイリスト。
で、このアシッドのFISHN HULLが生まれるにあたってツインピンがきっかけの一つ。もちろんおそらくトリスタンのことだから頭の中にポーンとか音が鳴って、その時点ではこの板のおよその姿が浮かんだに違いないけど、浮かんでからにしても当然のようにツインピンの記憶が呼び出されたのでしょう。
深く切れ込んだ"二つのテール"は、それがハルにコンボされるならビヨンビヨンに動いて魚状態と、それがサーフィンに起こす"こと"がイメージされる。
実は一般的に見るフィッシュテールをフレックスパネル化した、言うなればフレックス・フィッシュは今までにもいくつも作例があります。
ここで一つおもしろいのは、アシッドはフレックスパネルを持つフレックステールにおいてでも大変よく出来た、つまりフレックスのプログレッシブレートがとてもよく整った造りを確立していますが、なんでこのFISH HULLではフレックスパネルをハナから無視したか。
要はこのようないずれにしてもテールエンドが割れたデザインではフレックスパネルはTOO MUCHなんだろうと。特にこのようにディープな切れ込みではさらに。
それでトリスタンは最初からデザインとフォイルによるフレックス・ツーテールを求めた。
FISH HULLのこのテール、見方としてもっと分かりやすいのは、ツインテールあるいはツーテールか。私、トリスタンとはそんな呼び方でやりとりしてます。
私、とても感心したのは、そのテールエンドをポイントを持つデザインではなく言わばスモール・ラウンドテールとしたところ。
もちろん、ハルであってもポイントテールはいくらでもあるし、そのモデルのトータルなサーフデザイン・コンセプトに求められればピンテールまで選択されます。
FINS_FLEX.MP4
しかしながら、こいつはディープなスワローというかスプリットテールなんである。ふたつに割れたテールのそれぞれはすでに小さいのね。
ターンの回転感に奥行きを求めないのであればピンもありだが、ハル感触の濃さとリフトのコネクションを与えようとすればプッシュの最後までフレックスのエネルギーを溜めて、かつリフトへのトランジションまで輪郭を失わないなら、そりゃこのようなスモールラウンドだろう、と。
で、また、このテールエリアにコンケーブを用いたところも納得の選択でして、別に毛嫌いするわけでもないんだけど、よくトリスタンとコンケーブを採用することについちゃ慎重なところは気が合うところ。
トリスタンの指向するオーセンティックなハル骨格においては、コンケーブはなんだかちょっと化学調味料的な気分、てのが私たちが意見を共有するニュアンス。
実際、その分野においてコンケーブを用いたデザインはおおかたは良しと働く一方で、ハル感は借り物のような薄まり方をすることが少なくない。
ところがこのFISH HULLではテールエリアに迷わずコンケーブを施した、その訳。
ディープなスプリット、である。
例えばボトムターンでは、テールエンドはライダーの荷重によってまずはテールのボトムは水の高圧に押されて、その高圧によってテールがフレックスすることになる。
これはハルの場合、一方で意図的な可変テールロッカーともなる。
そのターンのプロセスの間、テールはエネルギーを貯める役割とロッカーの変化の二つを感じるライダーのレスポンスによって制御される、言うと大袈裟だが、実際まあそういったことが起きてるわけなの。
ここでいつもと違うのは、二つに分割されたディープなツーテール。
最初っから主として波側に分けた半分のテールエリアにそのターンをホールドさせるのだ。てことは、それはもっと小さな回転弧でリフトするってのがサーフデザイン。
コンケーブってのは、およそのイメージで言えば、水が板の縦方向への流れではより高速化する水流によって低圧化することによるリフトを得やすく、横方向へのベクトルが多くなるとその低圧そのものがリフトによるズラしやすさ、早い話が動きの良さ軽さを生む。
そう言うわけです。
FISH HULL、動く、とも言える、また"違う"マニューバー性を備えたハルということです。
もちろん、ディスプレイスメント・ハルですから、それもアシッドならではの濃厚なハル・フィーリングでありますからね、ボトム前半およそ3分の2にはディープでトリスタン式のハルを備えます。
つまりアシッドのハル・フィーリングたっぷりのまま、コンケーブに邪魔されずに回転とリフトを派手化しマニューバー性を加えた。
当初トリスタンはこの板を、疑いもせずにシングル・フレックスフィンでデザインしました。
これ見てよ!、って送ってきたその写真を見た私も、もちろん"やったぞ"って思いました、疑いもせず。
ところがそのすぐ後にそのシングルフィン・バージョンをライドしたトリスタンから、これはシングルフィンじゃないかも、と言ってきたんです。
なんだかボトムターンも目一杯プッシュする感じじゃないし、だからフルドライブじゃないんだよね、と。
で、よく考えりゃ当然だけど、なんでミランドンのツインピンに注意を払わなかったのか?、と。
ツーフィンじゃないの!
二つに分けた長いテールのそれぞれに1本づつセットされるツーフィン、てことだけどね。
それで謎の解けたトリスタンは深い切れ込みによってできた長い二つのテールと同調して働くべき、ベースの長いハイトを抑えたフレックスフィンをイメージした。
そしたら出てきたじゃないの、あのパーレメンティア・ハルのために苦労してデザインしたラージフィン。そいつをスケールダウンしたイメージ。
閃いたトリスタンはそのフィンを、フレックスパターンも含めていくつかリデザインして辿り着いたのがこのツイン・フレックスフィン。
その結果はここからの後半で紹介する、トリスタンからのリポートにて。
彼からのメールの原文と、その後にはわたし的な訳文を添えました。
こないだ言ったけどシングルフィン版はなんか違ったんだよね、ボトムターンでめいっぱいのドライブができない。で、この板のデザイン・インスピレーションになったミランドン・ツーテール、そうツーフィンにしなくちゃ!、と。
そしたらまったく変わったね、ツインフィン・バージョンで乗った最初の波から足に伝わる感触はもう完璧、"これだ!!"って。
タイトターンではPMHともちょっと似たところがあるよ。でももっとフィンフレックスのご利益があからさま。で、スワローテールがさらにホールドする。
強烈なボトムターンやカットバックでもスライドアウトしなくて、このテールのホールド性は完璧だよ。
このツイン・ハルの波乗り感覚には超満足、君もめちゃめちゃ違うのが分かるはずだし、同時にすごく馴染みやすいはずだよ。
フィンデザインにはすんごく時間がかったよ、僕が求めたリッチなフレックスとレイクを持つラインを描き出すのは簡単じゃなかったからね。
でも結果は超満足、君も絶対気に入るよ。
で、質問された件、この板はバッチリ出来上がったからモデル化オッケー。
FISH HULL、もしオーダーがあれば準備できてるよ!
というわけですので、カスタムオーダーもお引き受けします。
ぜひご相談ください!