ダブル・ラスカルの話の前に、いよいよ3月から外国からの商用入国が条件付きで緩和されることに。
私もさっそくリッチと連絡を取りあって、入国条件の確認・準備とスケジュール調整の相談を始めます。
ところで今日の話の前に、あくまで私個人の腹の中の本音というか、独り言みたいなのを先に。
PAVELボードを求めてくださるサーファーにはご存知の方も少なくないが、リッチの削るサーフボードを手に入れ(それはもちろん波乗り)ることは世界中で簡単なことではありません。
で、私とエムズはかれこれ20年以上もPAVELボードを預かりお届けしている流れの中で、この10年は年に1度来日して私たちの山王ファクトリーでPAVELのスーパークオリティの板を製作するというスタイルになっています。
ご存知の通り、2020年の春の来日シェイプは無事に済ませることができたものの、その年に始まったコロナ禍は今日に至るまで、そもそも入国そのものが不可能という状態が続いています。
それはもちろん、次回製作のカスタムオーダーをいただいているみなさんが誰よりまず待ち望んでくださっている一方、おそらく彼の板を誰よりも多く見て触ってきている私にとっても、いくら状況が状況でも飢えを感じています。
分かりやすく言って、リッチのシェイプと板を見ない事に、飽きた!!
お馴染みさんはご存知のように、私はSNSガイではない。
ウエブもインスタも、いくつかのSNS発信手段は利用するにはするけれど、それはつまり発信することで、私の手元に近い写真や情報をみなさんに見ていただきたい、もちろんビジネスのツールとしても利用し参加させていただいている。
だけど、ひとのポストを舐めまくることはしません。
ところが、何かしらのアプリを開ければ目に入る写真もあるわけで、そうするってえと何やら誰かの真似みたいなものだらけじゃないの。
それはもう、世界のあちこちでね。
そういうものを見るにつけ、直接間接の別はあるにしても、なんだこれRICH発じゃないのよ、っていうものが目に入ることは少なくありません。
そんなわけで、コピペみたいなセールストークと写真が大方とはいえども、目にも心にも響いたものはごく僅かなこの2年でした。
それゆえに、私だって飽きた!、と言わせてもらいました。
さて、今日のお題、11'1" DOUBLE RASCAL / ダブル・ラスカル。
この板の誕生ストーリーの一部は以前書いたことがあるので読んでいただいた方もいるはずですが、今回はおそらくまだ開帳していない、それもすごく大事な筋も加えて書きましょう。
この板、つまりどデカいFISH。
ね!、というのもずいぶん前からFISHにはサイズのリミットなんてないんですよ、と知らせ続けていた。
そろそろみなさんに気がついていただきたいのは、私たち日本の波乗りマッドネスの中のさらにマイノリティには、世界水準の本気が宿っている。
世界にはいまだに、"レトロ"とか言っちゃうワードを見かけるところだってあるんである(ある意味、ストレートだけど)。
誰も、"ファンボード"なんて言わなくなってんのにだ。
いつもだけど、このコンテンツは脱線(死語だけど)します。驚かないでね。
話を戻して、とにかく小さいFISH以外のミッドやらビッグやらメガやら呼ぶFISHたちは、もともとそこに居ます。
自分のクイーバーに思いつかなければ無理ないとして、ある程度以上流行らないと存在の想像すら無い、というのは、?。
マイノリティはポーズではないので、想像力というのは、ね。わかるでしょ。
ダブル・ラスカル、リッチがそう呼んだから私も倣ったんですが、いつもね、リッチとモデル名を探すときに感心するんですよ、リッチのアイデアに。
私だって、けっこういいの思い付くんですけどね、一応言っときますけど。
このデザイン、とても個人的な興味と波乗り感覚の中から、試してみたい思いつきからリクエストしてシンプルに言えば、11クラスのFISHでデュアルフィン・セットアップ、後ろ足エリアにチャイン、というもの。
つまり、例えばイージーワイダーを持っているサーファーは知っているように、チャインは重力フリー・スティックフリーとスピードのコンボにおいて似る物が無い。
それをデカいFISHのターンにおける後ろ足エリアのルース性(ここでは、動きのよさと操作性の軽さ)に活かしたかったのです。
それは今まで誰のデザイン・シェイプでも見た事もないもの。
そのリクエストをリッチに投げておいたのです。
そこに、なんと偶然に現れたののが引き取り手のないブランクス1本。ところはUS BLANKSの輸入元倉庫。
それは2020・来日製作のスケジュールが半分ほどに進んだ頃。
そのブランクス、11'3Dのエクストラ・キックのスペシャルロッカーで、普通に見たらそのキックの大きさ故に、?が出るもの。
だけどリッチは、これで今回リクエストのCHANの11'1"削るぞ、と。
いいね!、と私。
とは言ってもこのスペシャル・ロッカー、どうすんのかな?と思っていたらリッチさん、ノーズとテールをひっくり返して使うというではありませんか。
このようなカウボーイな発想、世間ではとても珍しいんですが、私はデイル・ベルジーさんのやり口で免疫がある。
始まってみればその先は進行が滑らかなもので、リッチはいくらでもビッグボードのデザインとテンプレートはあるくせに、アウトラインはなんと私のラスカルのアウトラインを2段使いするというアイデアを持ち出してきた。
さすが、どんな板も機能的なカーブとテンプレートを駆使するだけあって、このような驚きの応用もその完成度も驚異的。
そして描き出したカタチ、これです。
シェイプが進むにつれて、さらに私が驚いたのがこの板の前半2/3にデザインしたディスプレイスメント・ハル。ただし、そのベリーには大きなカーブを用いてディープでありながら安定性が良い。
この板、滑走をつかさどる基本のサーフデザインにハル、ターンに後ろ足チャイン。
だから、バックフット・チャイン。
フィンデザインはミディアム・キールとでもいうようなデザイン。FISH、ですから基本のダブルフォイル。
ボトムのデイテール写真、ここで見てもらうことができる何枚かではテールエリアのボトムシェイプがもうちょい分かるはず。
だけどこれ外側の、一見アンダーレールのコンケーブのように見えるパートは、これこそがまさにチャインなんです。
チャインたらしめているフェイズ構成は、写真ではギリギリか。
でもね、そのくらいにしておかないと、想像力と創造性を働かせながら面白がって読んでくれているみなさんが楽しんでくれるのは、そのために書いているのですからまさにウエルカム、
そして、そのサーフ感触は、というと。
これがこちらのイメージやリクエストを軽く超えてくるのは、それはもうリッチの決まりなんである。
何しろこの板の族をハルに仕立てるアイデアという時点で、私を知り抜いていてさらに先を提示してくれてる。
そしてターン、それもこのビッグボードで、おそらくあり得ない軽快な操作性と深回りの回転性は同じくリクエストの遥か先。
このサーフデザイン、大きな波(なかなかの)ではおそらくハッピーすぎるかも。
だけどそもそもこちとらのターゲットは大きくても肩・頭以下での、スマイル。
完璧でした。
古くからのお馴染みさんは知っての通り、私はビッグボード好きでもあります。あれこれ乗せてもらってきた中の3本指の1本になりました。
今日は、とあるお客さんとの"デカいFISH"の相談事から取り出した、この話。
いくらなんでも、そろそろリッチのシェイプを見たくなりました。
刺激のステージが違う。