2019.11.15 UP DATE
シェイプはデザインからやってくる

リッチ・パベルがシェイプ上がりのフォームにサインをするとき、名前とともにモデル名を書く代わりに"デザイナー"と書き入れることがあります。

これ、気取ってるのではなくて、むしろ普段からその言動に主張めいた言葉を使わない彼の穏やかな主張と私は感じます。
ちなみに彼のサインは普通のシェイパーよりも小さな字で書かれますが、その控えめなサイズは素敵である。


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そもそもリッチの板、PAVELボードは板自体がそれが何であるかを表わしている。
何か一つ言うにも代わりの言葉や物事に置き換えて表すリッチ、実は会話の中に主張が含まれていても気がつきにくいのと同じで、中には見過ごしてしまうシェイプに、世にも恐ろしい?、仕掛けが隠されていたりもするんです。

シェイプされた板、それがどんなものであってもシェイプされた以上はデザインではある。
だけどそれらの全てがデザインされたものがシェイプされているのかというと、それはそうじゃない。
デザインされていなくても、シェイプはされる。

良い(これ、学校の点数みたいなことじゃなくて、自然の理に適う、ね)デザインはサーフデザインであり、サーファーは"すごく"感動します。
ここのところは、オリジナリティの有る無しというとても素敵な場面とともに、さらにその先の高いステージの実力の現れるところ、シェイパーにとっては。
そしてそういう板を波乗りのお供にしてその機能性と魅力を感応できる才のあるサーファーは、まさにそういうデザイナー・シェイパーとサーフィンの日々をともにするというお付き合いをすることになるわけです。


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今日のお題で取り上げたいのはね、デュアル、つまりデュアル・シングルフィン。
フィンが2本あるのにシングルフィン、というまるで禅問答みたいなアイデア。

このデュアル、リッチ・パベルはダブルハピネス/イチクパークという二つのモデルに加えて、今年はダイナミック・デュオというモデルをデビューさせました。
このモデル、別名リッピング・エッグなんていう、なんともそそる呼び名もリッチは与えました。

一般的にこのデュアルの特長として説明されるのは、シングルフィンの乗り味と操作性にプラスより高い機動性と操作性、といったことになります。
実際、よくできたデュアルはその通りでありながら、ネガを見つけることは難しい。

ただし、時々聞こえてくるのは、動きによってはやはり2本のフィンの存在による動きの重さが現れる、と。

ところが、PAVELのデュアルにはそれが無いのです。
いつでもその操作性も動きも軽くて、動きに重さが出ることが無い。
リッチの肩を持って、一方的なセールストークをしているわけじゃないですよ。
これらの板を所有して波乗りするサーファー達が口を揃えてリポートしてくれる話のまま。

一つヒントがあるのですが、PAVELのデュアル、一般的に見られるデュアルと比べてフィンがセットされる間隔が広めです。
これ、気をつけなくてはいけないのは、単にフィン同士の間隔の幅を数値的に説明したいわけではなくて、ですからその数値をおな時にしたところで同じ結果がついてくるわけではないのです。

もちろん、その幅・間隔には譲れない訳があります。
それにプラス、リッチや世界をリードする幾人かのシェイパー達が共有するフィンセッティングの法的式(レールのボリューム・ポイントとの正しい関係性の決定的なノウハウ、です)AWPというものが存在します。

その両方とそれらが、さらにアウトライン・ロッカー・フォイルとの正しい関係によって、サーフィン上の結果となって現れるわけです。
いやあ、これは大変な作業です。


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こう説明してくると、とても理屈っぽく聞こえるかもしれませんが、全然そういうことじゃない。
サーフィンに起きていることにすぎません。

自然科学です。
科学も数学もできの良くない私が言うのもはばかられるが、自然科学といえば難しいけど、つまり自然界に起きていることを説明するお話っていうことです。

一つ最近見た実例を写真とともに説明してみます。


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今年デビューの、このダイナミック・デュオ。私たちの地元の名士、というか名人、自らも辻堂でラグーンサーフを主宰する太田くん、ここではO師と呼びます。

O師は優れたプロサーファーであり、とても長いキャリアを持つとても良いサーファー、そしてそういうキャリアのサーファーには珍しくほんとにいろいろなサーフボード・デザインを"ほんとに"楽しむ人。
数年前には自身でもシェイプをスタートし、すでに良い結果を積み重ねています。

O師は時々、PAVELボードのオーダーを私に依頼するのですが、今年はダイナミック・デュオを1本。
少し前に出来上がったこの板を下ろしたO師の感想、"最初見ただけだと大きめのフィンが2本だし動き重いのかなと思ったら、全然逆でなんだかすごく速くて動きも上がりが速くて軽いんですよ!"、と。

そして、"上げようとした時も、テールがすごく速く軽く寝るんですよ"、と。
ここいらへんの話は、バックサイドで小さなセクションで上がる前のテールの寝かたを見ると分かります。
波は小さくて力のない感じが分かりますが、ここでもう板が上がるのがO師には伝わっているので、O師はすでに上で回す準備に入っていますね。
つまりかかと側のレールを外す流れに入ろうとしています。


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そしてもう一つ、ダイナミック・デュオにはリッチの古くて新しいデザインの再開発が仕込まれているんですよ。

それは言わば、フラットボトム。
この板、乱暴に言えばノーズからテールまでボトムは平ら。分かりますか?、た・い・ら。

リッチさん、いつでも驚くほどいろいろなデザイン・シェイプを繰り出すので彼の板を5本10本見ただけでは全貌どころか傾向すら分かりません。
というよりも、傾向はありません。

それほどいろいろなサーフデザインの引出しの宝庫が、PAVEL。

ですから時を選ばず、いろいろなデザインに同時に取り組んでいますが、そのリッチが去年からちょいちょい繰り出す再開発がこのフラットボトムです。

この板を挟んでO師とも何度も話題になっているのですが、一般的に現在よく見られるダウンレール系のボトムといえば何が何でもコンケーブみたいな傾向。


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つまり、その真逆がこれ。
アウトライン・ロッカー・フォイルだけで、とても速くてなめらかで動きの良い板をバランスしてしまう術といえます。
いやね、この板ではないのですが私も少し前にフラットボトムをシェイプしたあるシングルフィンを下ろしたばかりなのですが、こんなにサーフィンは楽かね!、としか言いようのない板なんです。

ここで話をタイトルに戻しますね。
こういうシェイパーによってシェイプされた板は、すでにサーフィンがデザインされているのです。

あんな風なレールの形とか、テールやノーズの薄さとか、アウトラインとか、ボトムの感じとか、流行ってるみたいだからそういうの取り入れて削っちゃおうかな、で出来た板もシェイプが上がればそれはデザインてことになるんだが、サーフデザインが、波乗りがデザインされていない。
◯ニ◯ロが毎年新しいのを買ってもらうために、アイテムの格好を変えてデザインと称するのと同じ。

これがこのようなサーフボードと、例えばアートワークとの違いです。
自然科学の中で機能するだけでなく、サーフィンの最大のトピック、サーファーの感動と情緒の満足。

よく、正解はないのだ、って言うでしょ。
ところがどっこい、正解はあるんです。

ただ、正解はいくつもあるだけ。
おもしろいね。

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