今日の話はそんなに長くありません、あんまり驚いたので久しぶりにこのBACKDOORに書き留めておくことにしました。
言葉にすると、いかにもそこら中に転がっているようなセリフ、魔術。
実際、そこら中に軽々とこの言葉は使われていて、へたするとちょっとありがたみが薄れているくらい。
ところが、魔術としか表しようがない仕業というものはあるもので、もちろんここはシェイプの魔術の話。
先日も当サイトのトピックで、アウトラインの魔術師たち、なんていう話を書いたところですが今日の話はそのアウトラインも含めて、デザインからそれをカタチにするシェイプまでのオーバーオール。
私とエムズは世界のホントのトップステージをクリエイトするシェイパー達のサーフボードを預り扱う、サーフィンをする者、そしてサーフィンとサーフボードの関係を探求することが好物の私にとってありがたい環境。
そういう者なので、エムズで扱うサーフボード以外にもいろいろなものを手に取り波乗りするのはごく自然な行い。
そうこうするのを長年繰り返してきたうちには、本当にいい板に出会う事ができました。
さらにありがたい事には、私はそのサーフボードをお客さんたちに買っていただき波乗りを楽しんでいただく仕事の中で、とてもたくさんのみなさんの声を聞く事ができるからその板がどういうものかがよ?く分かってきます。
私が驚かされた板のいろいろ中でも、今になってなおさらに驚きを更新し続けられているのは、リッチ・パベルと彼のデザインとシェイプ。
彼の板が常識をはるかに超えた素晴らしいサーフボードであることは、世界中のサーファーにもそして特に日本では山王製作PAVELのユーザーとその周辺のサーファーにどんどん証明されています。
何を今さらのように思われるかもしれませんが、そのPAVELボードをもっとも近くで、そして製作にも参加している私自身が、店や家で同じ板でも何度も見返すうちに、そのカタチやロッカーとフォイルの良さ・レールやボトムの造り・いくつものラインの流れと融合、そういうものがどんどん見えてきて新しい発見が終わらないのです。
このひとつの立体の中に信じられないほどたくさんの、意思を持ったラインが含まれてつながれているわけです。
見飽きる、見慣れるどころか、何度でも始めて見るものになります。それは感動です。
みなさんもやるでしょ、自分の部屋にラックを作って何本か板を掛けたりして、見るでもなく目に入ってくる、あれです。
それはそのままリッチのサーフデザインの恐るべき豊富さと、サーフボードとしての強烈なポテンシャルにつながっているのですからたまりません。
サーファーにとっては波乗り体験が何より優先しますが、家でくつろぐ時にですら波乗りの興奮へと導いてくれます。
私、サーフボードを見てこのような体験はデイル・ベルジーの削る板が最初でしたが、リッチのそれはとても複雑なのです。
まるで珊瑚の海の中を覗いているようです。綺麗な海の中はものすごく複雑だけど、心にも目にも痛くない、ただ感嘆とむしろ癒される。そういうのに似ている体験の連続です。
さらにその複雑さは、単に形状が複雑というケースだけではありません。一見シンプルで仕掛けが無いように見える形状のデザインでも、例えばハルのような盛り上がり系の形状でもその面の中にいろいろな変化が削り出されていたりします。
また、彫り物系などのパッと見ですでに派手な仕掛けが見えるデザイン・シェイプでも、その中に連続したカーブ変化と同時に、リッチがデザインするパートごとに必要な形状が流れるように恐ろしく高度に削り出されています。
こういう事の技術的な要素を説明すれば、つまり削るという作業なのに、残すというたいへん高度でデザイン力の要る仕業です。
が、今日はそれがいかに凄いことなのかという話というよりも、そのシェイプは心と魂でデザインされてすでに姿を結んでいるというところから始まっているトコなんです。
今日のこのタイトルを書くキッカケになったのは、上でも話したように同じ板を見ていても何度も繰り返す新しい発見、それは抽象的な発見じゃなくて見えている部分の中に新しいラインが具体的に見える、また増える。
ずっと以前から繰り返す体験ですが、ひとり腹の中で"これはすごいな"とやってるだけではなく、みなさんにも話したいなと思ったんです。
最近、忙しさが続いて、このBACKDOORも書いていなかったのでね。
こういうことがあると、明日波乗りしてえな、と思うんですが、コレばかりは波しだい(天気しだい、風しだい、あんまり寒いのいやだし、私の場合はね)。
Keep Surfin'