2019.02.28 UP DATE
Beyond Litmus

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3年ほど前、PAVEL 山王の製作のために我が家に滞在しているリッチ・パベルがリトマスの話題を切り出した。
リトマスのリリースから25年という節目だからいろんなアイデアが起きてるよ、と。

そのリッチはその話題はキッカケでトム・カレンのアイデアをカタチにした、Will & Graceを生み出したのは、この板を持っているサーファーなら知っているでしょう。

あの頃は、シーンにオルタナティブ・ボードなんていう言葉はまだなくて、今ならミッドレングスと呼ばれる板もファンボードなんて間抜けな呼ばれ方をしていた時代。
エムズはショップの歴史そのものがオルタナティブだから、フィッシュやエッグやボンザーやシングルフィン、そしてあらゆるデザインのロングボードなどなど、私たちがお勧めしてきたそういったサーフデザインに光を当てたビデオ・リトマスを歓迎しました。

ですから店にやってくるみなさんに、"面白いから見てみて"と、そのビデオをお勧めしました。
そんなこともあって、当時このビデオの輸入販売を手がけていた馴染みの営業担当者に、このビデオをこんなに売るのは日本でエムズだけよ、とか言われて複雑な気分がしたものです。

まだ見ていないみなさんには、オリジナルのリトマスをお勧めしておいて、そっちの話はそこまでに。

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さてこちらの新作、ビヨンド・リトマス、タイトルのままリトマスのその後をアンドリューらしいフォーカスで彫り込んだ秀作です。
アンドリューお得意の少し小さめなスクエアなハードカバー・ブックには豊富で濃い中身が写真とともに綴られ、巻末のポケットには本の内容をさらに拡大して見事な映像で見せるDVDまで付属するという造り。
限定数の出版でナンバーが手書きされています。

本の記事はもちろん英語で、とてもディープな話が多いのでただでさえ私たちには簡単じゃないのですが、そこはそれ、今どきは便利で気の利いた翻訳デバイスも手軽に出回っているので、分かりやすいところから飛ばしで読みつつ、ヒマな時にじわっと読み拾っていけば数年は楽しめるはずです。


その濃い中身からいくつかサラッと紹介してみますのでね、写真は主にDVDの中から切り撮りました。アナログなスクリーン・ショットですな。

興味を持ったらアンドリューのサイトを探してそこからオーダーできます。
送料入れて、AU 135ドル。ゆ〜っくりと3週間くらいかけて届きます。

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オリジナル作と同様、話はデレク・ハインドを中心にして進んでいきます。

そのデレク自身のトピックは、それこそリトマス以降、彼が探求するフィンレス・サーフィン。
リトマスで見せたスタイルの代弁のようなサーフィンでも、およそあらゆるサーフボードでのサーフィン。そのシーンや、いろいろなビデオや本で見ることができるデレクのクイーバーの多くが、その後フィンを切り取られあちこち切り刻まれてフィンレスボードに変身しています。

デレクさんの波乗りをウォッチしていたサーファーは知っている彼のクイーバーの1本のビッグボード、彼は確かビッグイエローとか呼んでいたかしら。
その板、リッチ・パベル・シェイプの、11フッター。
こいつ見事にフィンレス化されています。

ところで、ウソかホントか(どこかで聞いたか呼んだかも、忘れたけど)デレクさん、人と似たようなことはしたがらないし、デレクさんが発信するアプローチを誰かがマネをするようになったらさっさとヤメちゃう、とかなんとか。
その与太話がそのまま納得できるくらいくらい、独自性に満ちたサーフィンとサーフボードのデザイン性。

ってところに目がいきがちな一方、デレクさんのサーフィンの上手さに驚きます。

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デレクがコンペサーファーのキャリアにあった頃、彼に板を供給していたのがオーストラリア・サーフィン界のレジェンドの一人、テリー・フィッツジェラルドさん。
テリー自身の紹介とインタビューの中でもデレクについて語っていますが、当時(だいたい1980年前後ね)私がデレクのサーフィンに抱いていた強い印象はツインフィン(当時は全盛だったこともあるんですが)
のスタイリッシュなイメージ。
MR支配のツインフィン・シーンはたくさんのフォロワーを生んでいた中で、今思えばデレクさんのサーフィンは、あの頃すでにスタイルを表現していたと思うんです。

その話の流れで、オリジナル作の中で中心的役割のフィッシュのその後にも深く触れていきます。
ライアン・バーチもフィーチャーされていますが、彼がフィッシュの機能性について話すのもたいへん興味深い。
リッチはちょいちょいバーチからのメールなんかを私に見せて面白い話を聞かせてくれるのですが、実に多くのシェイパー達がフィッシュについてリッチから学ぼうとしているか分かります。


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スキップさんがスティーブ・リズについて話すくだりがあるんですが、そういえばスキップさんのフィッシュにデレクさんがリクエストや意見を加えた話をスキップさんから聞かされたのも思い出しました。

オリジナル・リトマスの少し前、ソニー・ミラー作のトム・カレンをフィーチャーしたビデオ、サーチング・フォー・カレン。
その中でカレンが乗るスキップ・フィッシュのサーフィンは、シーンにでっかいターニング・ポイントをもたらしましたが、リトマスもそこからインスピレーションを得たのが分かります。
南アフリカのあの有名スポット、デレクさんの家の近くのブレイクで行われていたカレンの撮影を聞きつけたデレクさんが(あれ?、アンドリューだっけな?)デレクさんのスキップ・フィッシュを持って駆けつけ、これ乗ってみてよとやったらしい。

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それまでフィッシュは今ほどいろいろなサーファーの目に留まっていたわけではなく、自由なサーフィンを求める一部のサーファーに楽しまれていました。
ましてスラスターのファンたちにはまったく無縁なところに持ってきて、トム・カレンがフィッシュで波乗りしてるってだけでショック。
それどころかその波乗りのカッコいいこと。
このビデオのこのシーンが多数派のショートボーダー達に与えた影響は大きかったのです。

で、今度のビヨンド・リトマス。
トム・カレンはセルフ・シェイプのエッグの波乗りを見せています。
今度はアタマの丸いヤツに乗ってる!、ってことになるとこれはまた別なショックということになるかもしれません。

なんたってそのエッグ、シングルフィンですから。
しかも私、ひとつ驚いたんですが、その板がVELZY SUPER EGGに共通したカタチ、アウトラインのコンセプトを持っています。
偶然、カレンが求めたカタチのコンセプトがそれ。

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そのほかにも見所に満ちた本とDVD、私がこの程度の紹介をしたくらいではネタバレはおろか、ほんのかすったくらい。
とても濃い作品です。
何年も後になってから、これはこういうことかい!、なんていいじゃないですか。

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