ジンガー、と聞いて、"はいよ"とすぐに分かる人はそんなにいないのは分かっちゃいるんです。
それなのにサイトの中のいろいろなところで、何気なくジンガーが、とかジンガーです、なんていうふうに出てきて申し訳ないです。
説明が足りていないこともあるので、今日はジンガーの話、します。
エムズはいろいろなブランドを輸入元として預かっていますし、それらはとてもたくさんのデザインを擁しています。
ですから、一度取り上げたデザインが、次に話題や説明などに登場するまでに5年や6年経ってしまうのはよくあることで、すみません。
ZINGER / ジンガー、はマイク・イートンさんのオリジナル・デザインです。
誰かの編み出したデザインを他のシェイパーやメーカーがフォローして広まったりするのは、サーフシーンではよく見られるケースですが、ジンガーにはフォロワーはほとんど見られません。
なぜか。みんなコイツのすごさに目を向けていない、としか言いようが無い。
ではまず、その生い立ちから。
ジンガーはボンザーの派生デザインです。イートンさんは私にこれを、ツインフィン・ボンザーだと思ってくれ、と説明してくれました、ずいぶん昔。
ボンザーのオリジネーターがキャンベル兄弟だっていうことは、みなさんだいたいご存知のはず。
兄弟は自分たちが作り出したボンザーが地元のビーチで評価が高いことに思い立って、当時のあちこちのメジャーなサーフボードメーカーに売り込んだ。70年頃のことです。
つまり、このデザインを採用して売り出してもらって名を挙げて、そしてもちろん稼ぎも上げようと思ったでしょう。夢を持って。
今ではボンザーはたいへん評価の高いデザインとして注目が増えるとともにフォロワーも増えていますね。
ところが当時、ほとんどのメーカーは興味を持たなかったようです。
彼らはティーンでとても若かったのですが、それが理由かどうかは分かりません。
そんな中でとても興味を持って歓迎してくれたのが、当時主にBINGでヘッドシェイパー格を張っていたマイク・イートンさん。
実は当時、BINGの評価を上げた主役の一人がイートンさんです。
そしてキャンベル兄弟のボンザーはイートンさんが磨きをかけて、BING BONZERとしてデビューしてそこそこのヒット作になったのです。
ボンザー、キャンベル兄弟のローカルデザインだった頃はそのデザインの特長は、例の寝た角度でセットされるハイアスペクトな2本のレールフィンにありました。
人によってはボンザー・コンケーブなどとも呼ぶ、深く長いスロット・コンケーブが発達したのはイートンさんのデザインによるところが大きいのです。
現在、キャンベル兄弟によるボンザーや我らがリッチ・パベルのボンザーは、そのスロットはそれほど極端な深さを与えたデザインではないですね。
とても深いスロットはイートンさんのコンセプトによるものです。
ここにこそ、イートン・ボンザーの強烈な特長の元が丸見えだが隠れていて、昔イートンさんが私に説明してくれたそのままお話ししましょう。
イートン・ボンザーは前足の下に割りとフラットに近いハイプレッシャー・エリアが、そして後ろ足の下には例の深いスロットによるスーパーなロープレッシャー・エリアがあるワケです。
この強弱の極端な大きさ。
つまりこれはそのシェイプのロッカーとフォイルが的を得ていれば、前足の加重によるプレーンが大きければ大きいほど、そこを抜けた水はスロットによる超低圧エリアに入って高速で抜けるということです。
この高速で抜ける水、板自体のドライブスピードに化けるのは言うまでもないのですが、ルース性(これは、だらしないスライドやフィン抜けではなく、純粋に動きの良さのことです)にも大貢献するのです。
つまり全体のデザイン性の調整によって、すごく速くてすごく動く板にできるんです。
もともとはボンザーのレールフィンはその後出現するトライフィン的サイドフィンの役割ではなく、ハイスピードのハードターンでもレールホールドを上げるのが主目的。
回転のキッカケやピボットのためではなく最低限のドラッグ、よりスピードに貢献するレールから生えたスタビライザー的発想ですから、ハイトを低くベースを長く、そしてボトムに対して寝た角度にセットされます。
さて、ジンガーの話しなきゃならないのにボンザーの説明が長くなりましたが、ここを分かってもらうとジンガーも分かりやすくなるんです。
で、ここで上に書いた、ジンガー=ツインフィン・ボンザーってことになります。
ボンザーはシングルフィン由来ですからセンターフィン絶対です。
で、話をややこしくしてしまうようですが、シングルがツインフィンになっちゃうんだからボンザーとジンガーはものすごく違う板なんです。
レールフィンとスロット・コンケーブを、ツインフィンにすることでものすごく軽い操作感+ものすごく動く板にしちゃったんです。
そしてものすごく速い!
たぶん、ターンから得るドライブ加速の立ち上がりは最速で、しかもドラッグフリー感触。
こういった指向の速さデザインは、リッチのハル系、近年登場しているマニーなんかのセミフィンレス系、同じくエッジボードが最新タレントですが、そういう系の元祖がジンガー。
しかも、しつこいようだが、動きがうそみたいに軽いんです。
だけど、だらしなくない。ずるっと抜けるとか、そういうんじゃない。
最初、あまりの足応えの軽さにサーファーのメモリーは、テールやフィンが抜けるんじゃないかと警戒するんだけど、軽くても速くても操作しきるだけドライブして廻る。
それがジンガー。
メカニズム・とても高度なデザイン性を間違いなく成し遂げなければいけないので、最初に書いたようにフォロワーはほとんど無い。
したがってオリジナルの輸入・販売元のエムズでも紹介できる板があまりないのが現実です。
そんな中で、イートン・ジンガーの跡目を背負う板がいくつかあるので紹介しておきます。
まず、イートンデザインの後継者であるジョー・ボーゲスによるオラデオロ・シモンズのバリエーションとして登場した、シモンズ・ジンガー。
そしてもとちろん、その日本製作バージョンである、Simの同じくシモンズ・ジンガー。
ここまでは短い板から長い板まで、バラエティあります。
さらにもうひとつ、最新開発の、Sim Number N5。コイツはミニ専用モデル。
これはミニシモンズの骨格とは違うまるで魚雷のようなプラットフォームとでっかいフィッシュテールを与えて、ジンガーを組み合わせたニューデザイン。
さて、そんなわけでジンガー、一度覚えるとクセになるサーフデザインであります。
毎日乗るとからだに悪い、じゃなくてクセになりすぎるけど、ちょいちょい引っ張りだすと笑っちゃうくらい最高じゃないの!、っていうメンバーかな。
なんでもご相談くださいね。