Before、を撮っておけば良かったんですが、Afterを紹介することになるとは思わなかったので出来上がりの写真で話を進めましょう。
私たちの山王ファクトリーは、ありがたいことに今や世界でも注目されるグラスショップです。
今日は山王のもう一つの仕事、リペアについてご紹介します。
この板お馴染みさんが、修理可能ですか?、とエムズに持ち込まれたものです。
ノーズから35cmほどストリンガーの両側のフォームがシュリンクしてしまっていました。高熱にさらされたことでフォームが縮んでしまう状態のことです。
ひょっとするとみなさんの中にも経験されたことがある人もいるかもしれませんが、例えば発泡スチロールを燃やした状態を思い浮かべていただけば分かるように、火によって燃えながら縮んでいくあの状態に近いことです。
サーフボードに使うウレタンフォームも発泡材ですので、ある程度以上の高温にさらされると二次発泡が起こります。
この二次発泡というのが、あの縮んでしまう状態です。
持ち込まれたお客さんの話によると、置き場所が納屋のようなところのようで夏場は内部がかなり熱がこもるらしいのです。たぶん他の板も置いておるようですので、たまたまその板のノーズ付近が高温になったり、暑い陽が当たるような場所だったのかもしれません。
とはいえ、そういう場所でサーフボードを保管しているサーファーも多いのでは。
夏の昼間の日当りでずいぶん環境が違うと思いますが、みなさんも気をつけてくださいね。
ところでこの二次発泡のリスクですが、ウレタンフォームでもEPSフォームでも普通に使ってケアされていればまずトラブルになることはありません。
夏の車内の熱い陽が当たる場所に放置するとか、上で説明したような極端な状態でもなければ心配しすぎる必要は無いのが普通です。
ウレタンフォームに比べるとEPSフォームが二次発泡点温度が少し低かったりなど、また板そのもののカラーがとても濃い色(黒はもちろん)だったりすれば温度に対するケアはより気を遣ってください。
そして一方で同じマテリアルでも、メーカーによるフォームそのもののクオリティによってのリスクの差があります。
今回のこの板の場合、置き場所とフォームのクオリティの両方に原因が考えられるケースです。
このクオリティについては一概に断言できるケースばかりではないのですが、私たち製作業界ではある程度はメーカーや産地(と言うのも、ちょいと面白いですが分かりやすいかな、と)などでの評価が知られています。
エムズではお届けするサーフボードのクオリティの話を説明しますが例えばマテリアルの種類だけでなく、このようなクオリティについての知識は大事です。
よっぽど詳しい人でもなければ、見ただけでは分からないことです。
さて、そんなわけでこの板、私たちの山王のマスター"健ちゃん"とリペアのプロセスを相談した結果、ロッカーとフォイルをなるべく正確に再現するための方法を取りました。
シュリンクしてペタペタに縮んでしまった部位をストリンガーだけを残して切り取り、そこに別なフォームを貼付けてその部分のシェイプを再現します。
その上でなるべく近いカラーレジンでパートごとにグラスをパッチして、その後クリアで修理エリア全体をフリーラップして、ホットコート〜サンディング〜カラー合わせのレジンピンライン〜グロスレジンコート〜空研ぎ〜水研ぎ〜ポリッシュ、という流れです。
出来上がりはご覧の通りです。
とても高度にシェイプの再現とレジンのカラー合わせをしていますが、切り取った部位に貼った新しいフォームとのデンシティやセルの元フォームとの違いが、インセットのティント部分と貼り合わせラインを見せていますが、レジンピンラインとレールのオパークは限りなく元色の再現が出来ました。
実はピンラインは元々エアブラシなのですが、今回のリペアでは色合わせをキメるためにレジンでほどこしました。
ここまで仕上がれば持ち主さんにも喜んでいただけると思うので、お渡しするのが楽しみです。
この板、仕上がって山王のラックに収まっている時にたまたま現れた事情通の某氏は、元のグラスより直した所の方がぜんぜん良くなっちゃったじゃん!、と盛り上がっていました。
マテリアルもグラスワークもあまり良い評判を聞かない、南方アジアの某国でグラスされた板ですからブランクスもひょっとして怪しいかもしれないし、グラスワークのクオリティもフィン周りの写真を見ても分かる、ちょいとお粗末なレベル。
ですが、持ち主さんが気に入っている板、バッチリ直して復活です。
まだエムズと当ファクトリーのリペアをご利用いただいたことのないみなさん、小さなリペアから大仕事まで直せないものはありませんし、ナンバーワン・クオリティをお約束します。
ぜひお試しください!