2016.09.24 UP DATE
リトマス、20年

PAVEL 2016でデビューした板の一つ、Will & Grace、何度か紹介しています。今シーズンはわずかな本数だけ顔見せ程度の製作にかぎられましたが、それらが出来上がり始めたので先日も当サイトのTOPICSで軽い紹介をさせていただきました。

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PAVEL 2017でも本数限定でカスタムオーダー受付中です!

そうしたらまあ、タイミング良く直後に発売になったBLUE誌でもリトマスとその後から今、みたいな特集が組まれていました。

実はリッチからは今年の来日前からリトマス20年にまつわる話題やそこから発展したアイデアなんやらが、いろいろな所やいろいろな人々とよく出てくるんだよ、っていう話をいくつか聞いていたんです。
で、この板Will & Grace、リトマス周辺にあるもっともトピックなシーンと超有名サーファーとリッチとの話から生まれた板です。そのシーンで乗られたフィッシュの要改善点のアイデアを聞かされたリッチが、彼の膨大なフィッシュ・デザインを駆使してそれらのアイデアに沿ってデザインされた板なのです。

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サーチング・フォー・カレンの中のフィッシュライドは、もともとのフィッシュライダー達はもちろん、ものすごくたくさんのいわゆるショートボード・サーファーをも驚かせました。だって、あのカレンが見せるフィッシュのカービングはいつものショートボードのアスレチックなインパクトだけでなく、多くのショートボード・サーファーにむしろ情緒的な感動を与えました。これはショートボード・シーンの中でも、もしかしてとても珍しい出来事だったかもしれません。

リトマスを一つの契機にサーチング・フォー・カレンや、それらに触発されてリリースされたいくつかのビデオなどが後押しになって現在のオルタナティブ・ムーブメントにつながったことは事実です。そしてまた、リッチ・パベル達が中心人物となって世界中にイベント、フィッシュフライが広まりました。

そして、リトマス20年です。
なにも10とか20とかいう数字に意味があるわけではないでしょうが、20年というのはそのインフルエンスやムーブメントによる、たくさんの成り行きと結果がたまるには十分な年月で区切りもいい。

リッチに聞かされた20周年の話題の多くの中に、たくさんの発展的な話題とともに発展過程で生まれる?な事、も含まれていました。

何号か前のサーファーズ・ジャーナルで、シェイパーのキャリア、それも積んだ本数とその中身を話題にした特集記事がありました。気になる人は探してみてね。そこでは何人かのシェイパーのいろいろなコメントが紹介されていますが、そこであるシェイパーが語る近年のインターネット・マーケティングやSNSによるコピペな人気取り販売についての意見を読んだのですが、これはSNSの拡大とコピペ文化とセットなのは必然です。

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私はキャリア通じてサーフィンそのものと、サーフボードへの興味をエムズの活動原理としています。ですからサーフボードの造りにおけるすべての要素が関心事であるのはもちろん、その板が見せるいろいろな姿を捕らえる写真を撮るのと(下手くそだけどね)みんなに見てもらうのが好きです。それらはサーフィンを感じさせてくれるからです。みんなと一緒です、早い話、うわー早く乗りたいな?であり、明日の朝の波乗りが楽しみになるからです。

で、私はサーフィン屋ですから、出来上がった板からシェイプルームでの姿までいろいろな写真をエムズのサイトやFacebookや最近はInstagramなど、みなさんにも楽しんでいただこうと紹介してきました。それらの写真は、写真そのもののクオリティはつたなくても、素材であるサーフボード達は世界の最高の板ばかりですから、その光景はハンパじゃありません。
でまた、そういう写真を見てくれる人達には、いろいろな人達がいると思います。

ところで、特徴的なデザインのサーフボードはそのまさに特徴的なパートを真似して作れば、一見それらしいものが出来るには出来る。フィッシュなら、だいたいあんなアウトラインに大きめのフィッシュテールにして、キールフィンみたいなのを2つ付ける、と。
まあ、ここまでは似顔絵みたいなもんですね。

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で、もっといい感じの想像力を働かせれば、ロッカーは?フォイルは?ボトムは?レールのフォイルは?フィンのセッティングを決めるのは何?、なんて風にホントに大事な決め手を探さなきゃならない。
で、やっかいなのは、良いものは必ずこれらの要素が関連しあっているということです。いい板は、パートを別々にして出来てないですね!

このマネする文化、サーフィン界・サーフボード界では昔から許されている(?)、面白い現象。古くは、デイル・ベルジーが生んだPIGはその後数年間は、すべての板がピッグ風になったほどのインフルエンス。
アル・メリックのバンプスカッシュに乗るカレンを見たら、次の年はみんなバンプスカッシュ風になって、挙げ句は黒のインセットラインまで同じなんてのもあふれました。
最近ではオラオロのシモンズもそうですね。

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これね、とにかくサーフィン界の怪現象ですが、誰が決めたわけでもないけど基本的にはホントにいいものを作れば許そう、いやむしろ作り続けれくれ、というオリジネーターのマインドを期待した解釈でなんとか釣り合っているものだと信じてます。

サーフボードがそもそもサーファーが波乗りするために手作りして、自分の板は自分で作るという原点から始まった、サーファーがサーファーのためにサーフボードを創るという習慣がそのまま現代の経済市場にいたっても世にも珍しいサークルとして成り立っているのです。

今はいろいろなスクールやレッスンも発達しつつあり、オリンピックまで話題になっちゃう時代ではあり、それはサーフィンの一つのバリエーションでもあり良い進化です。

一方でサーフィンは手取り足取り教えてもらうんじゃなくて、身体で感性で身につける、少しでも魚や海の生き物達に近づく体験であり、だからこそサーフボードはむしろサーファーよりも先に波や魚たちに近い存在・デザインだろう、っていう原理があります。

そんなプリミティブなサークルとサーファーらしいマインドが、サーフボード・デザインを規制で縛るという習慣から遠ざけていると思います。
だから、もしだれかのデザインをマネするならホントに魂入れろ、と。それなら共有と言えるよ、と。魂入れる、のは簡単じゃないです。だいたいからして、自分が作ったそれがどんなものになっているのかを知ることができるところに到達する事ですら大変な高みです。

それがどんなモノになってるのかを自分で厳しくジャッジするマインドをうんと上げていく精神を向上させる気持ちを持って、"オリジネーターへのリスペクト"と言うね。
最近はリスペクトって言葉もずいぶんと安売りされてるけど、そう軽々しい事じゃない。

SNS見まくって、ちょっときわどい見た目の特徴をちょいと追い込んで作ってみて、ほら同じように出来ました、かな?
"オリジネーターをリスペクトしてます"っていう言葉と自分の作るモノとの釣り合いがちゃんと見えないといけないから大変です。

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私達はショップとしてのスタンスだけでなく、製作現場と一心同体でやってます。
最近、いくつか今日の話の切っ掛けになるような事を見聞きしたので、ちょっと触ってみました。
見た目も中身も、いい魂のもの見つけたいじゃないですか、サーフィンですから。

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