リッチの来日製作期間はいつものことですが、私自身も現場と一緒に仕事するのでものすごく忙しい日々が続きます。
そんなもんで、書こうと思って今見たらこのbackdoorページ、前回のポストがリッチ到着して少しのところで、触りの話。
触りのあとがすぐに、あと3日。
実際にはこの期間中はとんでもなくたくさんのトピックが山ほどあるのですが、シェイプの様子やシェイプ上がりの板の写真、上がった板の写真なんかをクイックに紹介するのが精一杯になってしまいます。
とても面白い話がたくさんあるのでおいおい紹介するとして、今日のbackdoorではこのページらしく掘り下げた話にスパイスかけて、ちょいと違う切り口の話題をお届けしますね。
なんたってこういうのはFacebookやInstagramじゃなくて、ここでこその中身です。
で、今日のそれは何かといえば波乗りと板の話だけど、サーフボードのでこぼこ、の話。
波のでこぼこは嫌いだし、もちろんサーフボードにホントのでこぼこがあっちゃまずい。
でこぼこの話に見せかけて、実は板そのものと波乗りの話なんですが。
5月の最終土曜日に辻堂でフィッシュフライがありましたね。私たちも仲間と一緒に板を持ち込んで、いろいろなサーファーと会っておしゃべりして楽しく過ごさせていただきました。
リッチも来日以来、ずっとシェイプに集中していて、それは彼が一番好きなことだから最高だけど、フィッシュフライで色々な人やPAVELを楽しんでくれているサーファーにも会えてよかったです。
フィッシュフライはもともと発祥の地であるサンディエゴで、リッチ・パベルもその中心的な存在ですが、日本でももう結構前に静岡・静波ビーチでの数回の開催ののち、昨年からは湘南。辻堂で草っ原の上で再開しました。
そのフィッシュフライの後、いらしてくれた何人かの人がとても面白い話と感想を聞かせてくれました。
板、ずいぶん違うもんですね!、かいつまんで言うと、その感想が今年は何人かの人から聞かれました。
それはね、聞いた私の印象でもジャッジのような言葉じゃなくて、本音で驚きと一緒に言ってた。
しかもその人たちはたいてい初めてのフィッシュフライではなくて、何度か見てきているうちに今回はずいぶん目が出来たみたいに、です。
さて、サーファーは板を見れば、まずはそのカタチを見ますな。
で、その反り具合やら幅だの厚さだのを吟味したりして、どんなフィンがいくつ付いてんだ?、みたいに進む。
で、ボトム、水に最もたくさん接するこのパート、これが最も分かりづらい。
ここはホントに不思議なパートでね、ぱっと見ただのシンプルな面に見えるものもあれば、ここでご覧いただいている中にもあるような、まるで宇宙のようなものまで。
もちろん、複雑に見えるいかにも仕掛け満載みたいなのがエラい、みたいなことではありません。
一方で近年常識みたいになってる、シングル〜ダブル・コンケーブ、なんてのもまるでアテになりません。
いや実際には、まあその通りなんですが、考えてみてください。
流しそうめんやろうってんなら、まあその水路は竹を二つに割ってまっすぐなもので文句ないでしょう。
しかしね、サーフボードはすでに最初からカーブをまとったカタチがあって、反ってるし、厚かったり薄かったりしてます。
そんなサーフボードのボトムに、コンケーブだからって、ここからここまで掘ってありますよ。深さはこんなもんですよ、で、いいワケがない。
例えばですね、ダブルコンケーブがね、その断面を想像してみるだけでいろんな曲線がありそうじゃないですか?
これも例えばですけどね、そのコンケーブのエッジに上がるカーブがね、こうキュッと切り上がってるかもしれません。
そうなってるとしたら、そのレール際を外に抜ける水にはどんなことが起きると思います?
そういうことの、ものすごくたくさんのそういうことの集合なんですね、ボトムデザインは。
で、ボトムデザインだけなワケがありません。全部です、ぜ・ん・ぶ。
その全部がまるで全く一つに働くのが、素晴らしく良いシェイプで、そのシェイプの設計がデザイン、です。
今日ここでご覧いただいている写真には、シンプルな美しい曲面、チャンネルのメカメカしい姿、いろいろなコンケーブのミックスされたまるで自然のうねり、掘るのではなく残しながらの曲面に変化と抑揚が見えるもの、なんかがいろいろです。
リッチ・パベルのこれらのデザイン・シェイプは尽きることがありません。
今日新しくできたものもあれば、ずっと昔にデザインしていてすごく久しぶりに開いた引き出しもあります。
これらは彫刻として削られたものではありません。リッチもいつも言いますが、波から現れて波に交わるものです。
私たちの目は不器用ですから、パートごとにサーフボードを見ていきます。ですけどね、ホントはものすごく器用ですから見えないこところのカタチの表れも見ています。
パートに分かれているようでも、そのパートがすでにダイナミックな3Dで形づくられているべきであり、さらにパートはすべて3Dに連携しているのが、リッチの創るものです。
で、それがホントの、いい板です。
リッチ・パベル、いつも日本に来ればウチで家族暮らしして、ずいぶん長い付き合いだよね〜なんて彼は言ってますが、私は本当に感心してます。
彼から大切なことを教わったり板を乗ったりしてブレークスルーしたサーファー・シェイパーたちが、すごくたくさんいます。
割と近年ならマニーやヘスやダニエル、最近ならアレックスやライアンバーチやハリソンたち。
もう一人のライアンもね。
日本でも佐藤英進にはずいぶん目をかけているし、健ちゃんはリッチの板を任されながら奥義の姿を目と手と体で吸収してます。
そうやって筋のあるサーファー・シェイパーに幾つかのヒントを分け与え続けてます。
でっかい波乗り愛です。
私たちはみんなしてサーフボードのその理屈を知らなきゃいけない訳ではありません。
見えるのなんて、全く簡単じゃないです。無理矢理見えなくていいと思います。
ただね、体験すると見えるようになってくるもんなんです。なんでもそうでしょ?
ただ、経験すればいい。それだけ。
しないとずっと知らないままだけど。すりゃ、分かる!
サーフィン、どこまでも個人的な体験と喜びですから、誰かに遠慮することはないです。
あなたが素晴らしい板と巡り合って、あなたの喜びです。
経験に到達するまでが、これがなかなか、ここがセンスです。