前にも少し写真で紹介したことがあります、この2本。
1本は昨年、もう1本は今年、私用に製作した板ですが、お分かりのようにPAVEL / Rich Pavelシェイプ・山王グラスの2本です。
自分の板は趣味と遊びとプロモを兼ねて時にはシェイプにもグラスにも、いろんなトライやいたずらや、それにショーモデル的な提案なんかの要素を込める事があります。
そういういろいろなスタディなどは、みなさんのカスタムオーダーの参考にもしていただいています。
この2本にはそのいろいろが、たくさん入っています。
PAVEL山王にいただくカスタムオーダーではみなさんが自分のアイデアや好みでカラーを指定いただきますが、意外と多いのが私に任せるというリクエストです。
自慢でも何でも無いんですが自分の板にはいろんなチャレンジをしてみるので、それを見てだんだんみなさんが私にアイデアごと依頼してくださる事が増えてきたわけです。
自分じゃ冒険どころか、アイデアの時点で密かにこれ絶対カッコいいから、って確信してたりします。
さてこの2本、7'7" 6CHANNEL SEMIGUN, 7'9" 5FIN BONZER SEMIGUN、とでもいう板です。
セミガンとしてのシリアスな高機能デザイン・シェイプでありつつ、普段使いにも応じてくれます。
例えば7'7"、チャンネル・シングルフィンであることとおよその長さ以外はリッチに丸々おまかせです。
チャンネルには普段使いのフレンドリーな要素をデザインした仕掛けがされていますが、ケースによってはデザインの構成要素としてウイングなども用いられたりもします。
そういったことも含めて私はリッチにお任せにしますが、それはつまり先にディテールの一部にこだわるよりも、彼のような特級のデザイナーにはオーダー主のリクエストの大筋に対して細かい要素は作者に委ねるほうがデザインとシェイプに縛りをかけずにすむことが多いからですね。
もちろんモデルによって例えば、ウイングとウイングレスのそれぞれのプランシェイプをシンプルに選択できるようになっていれば、そこはお好み。
そして上がったシェイプはこれ。
いずれもボトムには際どい攻めたデザインとシェイプがほどこされています。
さてグラス、となれば、普通はボトムの形状要素にグラスプロセスがぶつかり合わないようになるべくシンプルなアプローチをします。
もちろんそういうシンプルなプロセスプランの中にも、ただでさえ技の差が出るカタチ。壁は低くありませんよ。
この2本に共通するカラーリングは、リバースインセットですね。
つまり通常ボトムから巻くサーフボードでは自然インセットはデッキ側にできます。ですからレジンカラーで巻く場合、デッキとボトムの色違いでは通常デッキのインセットが色違いということになるんですが、この2本はその逆。
単に作業プロセスが逆というだけでなくこのようにそのボトムのカットラインにあえてレジンでピンラインを入れようということになると、ここにはとても高度な技とアイデアとその個体それぞれに対応する工夫が必要になります。
チャンネルご覧ください。
チャンネルの凸凹をキワどく通過する、それもノーズからテールに向かって大胆に太さを変化させるという難度の高いダブルピンの一方を一番外側のチャンネルの峰で止める、と。
だけど、ボトムの仕上がり面にはカットラインはおろか、ピンのボリュームの形跡も出さず樹脂のピグメントと立体感だけ現す、とね。
5フィンボンザーではチャンネルのような段はなくとも、やはりリッチのボンザーならではの細密ないくつかのコンケーブが組み合わさっていますから、サイドフィンの建てとカットラインの処理とピンラインが、ビルダーにたいへんな技術を要求します。
ここではボトムのインセットに用いたちょっとミルキーなティントが、インセットの際でほんの少し濃くなるグラデ効果が得られたので、それを見せるためにあえて外乗せ。
それが出来るのもカットラインに秘密の処理の技を持つ、"健次"ならではの景色。
お分かりですか。
直接お話するみなさんには、そういう機会があれば、時にお話しします。
サーフボード、デザインとシェイプはまず天と地を分けます。で、巻かなきゃサーフボードにならない、水にも入れられない。
ですから、グラスワークはサーフボードの半分を造るわけです。
これは上物のシェイプに限っては、生死を分けると同じ。
"健次"はシェイプが見えていて、間違いをせずにすべての工程・プロセスで作業し、さわる事ができます。
サーフボードの残り半分をシェイプしているのと、正に同じです。
エムズが高橋 健次のオーナーラベル・OZサーフボードをラインナップに加えているのはそれです。
エムズがお届けする特別なサーフボード同様、別次元がステージです。