2015.09.27 UP DATE
顔つき、いいよ! トリビュート・シリーズ、その壱

今日は板の色柄、衣装の話。いい板にシンプルなカラーリング、これはもうとても良く似合う。
それも、いい色ね。

サーフボードの着色、いろいろな手法があるんですが、一番ポピュラーなエアブラシはテーピングとブラシワークしだいでおよそどんなデザインでも描けますね。エアブラシはとてもたくさんのサーフボードに用いられています。

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一方、私たちエムズがお預かりしているサーフボードの多くは、レジンカラーがほどこされています。
レジンカラーとひとことで言ってもとてもいろいろなテクニックやプロセスがありますが、この多くを身につけて存分に駆使できる職人は世界中にだってそう多くはありませんよ。
ましてこのカテゴリーは60年代70年代の製作シーンの凝ったテクニックなどが基本になっていますから、そこんとこの造詣が欠かせない。

このテクニックにおいてはサーフボードのカタチやシェイプにビシっと通じてないといけないし、テーピングとインレイなどのカットには高度な技が必要で、カットラインやインレイのラインの表現で顔つきがガラリと変わります。

そこにもってきて、私たちのウリには、色作り、ってのもあります。
で、いい板に洒落たカラーワーク、美しいトップモデルさんの衣装みたいなもんだ。

しかしながらそもそもそういう板は究極の機能美そのもの、そこにサーファーである作り手の職人が、もうひとつのサーフデザインであるカラーワークをほどこして、乗り手は盛り上がりの頂点だから、波が良かったりなんかしたらこれが最高の日。

さて、高橋健次と私たち山王クルーはシンプルなものから凝りまくったものまですべての板に"違う"技とテクニックを全力投入していますが、そんな中から今日はちょいとストーリーがらみの1本を紹介します。

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この板"V-Land"は、本名?を"Velzy Land"と申しますが、この名前はオアフ・ノースショアのとあるブレイクの名前、とは知ってる人には分かる。

リッチさんは今年の来日プロジェクトで2種類のスティング・デザインを完成させていきましたが、その片方がこのシェイプ。
もう片方、Cherry Bombの名前の由来はまた今度として、こちらV-Landの名はベン・アイパ氏のスティンガーのムーブメントを知る人にとってのいくつかのキーワードからアイデアを得ています。
そこにはオリジナルへのオマージュも込めてあります。

そこで私もリッチさんに1本所望しましたよ、もちろん。
フィンセットアップもボトムデザインと併せていくつかの選択があるところから、私はクアッドをね。

じゃあせっかくだから衣装のアイデアにもオマージュを、ということで私が思いついたのはこれ。

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確か5月のある日、ショップもシェイプも休みの水曜日でしょう、我が家の割りと近所に去年出来た、おっしゃれ?なタウン、の中にあるつ◯や書店をリッチや家人達と一緒にうろついていると眼に入った本が一冊。
実はこの本、少し前に出版を知っていて欲しいなと思ってたもの。

あらためて手に取って、リッチともこの本いいね!、なんて話してたら分厚い表紙を開けて1ページ目の中表紙はリッチの写真じゃないの。そのうち賈うべ、と思って、その日はみんなで何か食べたんだっけな、確か。
その数日後、仕事を済ませて家に帰ったら、その日リッチさんは私よりも先に家に帰ってた。で、時々見せるちょっともったいぶったすごくナイスな調子で、目配せした先にはちゃんとプレゼントのラップがしてあるその本。

"SURF CRAFT"というタイトルに、ボードライディングのデザインとカルチャー、という副題が与えられて、豊富で見事な写真セレクションと著者リチャード・ケンビン氏の独特な切り口とフォーカスによる周辺ストーリーが語られています。

古典的なハワイのパイポ文化や超プログレッシブなニーボード文化などにも切り込みながら、特にテーマ的な制約は無いにも関わらずやはりサンディエゴ周辺のクラフト精神による奇跡的なサーフデザインはこの本の重点になっています。
みなさんもぜひどうぞ、こういう本は買いましょう、お勧めします。

その中には当然ながら、ベン・アイパ氏のスティンガーが1本紹介されています。
その板の顔作りはもちろん今どきの流行りじゃなくて、ホントにかっこいいものは流行りも廃りも関係無い。
当時はある意味、今日よりもカリフォルニアのサーフボードビルダー達のハワイへの行き来が活発でもありましたので、この本に取り上げられている1本は、ベンさんがカリフォルニアで仕事をしに訪れたおりに製作された板ではないかいな、と私は想像してます。

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本からデジカメ写真でお借りしたをご覧いただくその板、まずはボトムは白のピグメントで巻いていますが、デッキのカットラインは例の大きなウイングでレールの下方に落としてテール周りまで回しています。
するってえとですな、板を正面から見ると下げたカットラインはウイング下でちょうどレールのピークの下に隠れて、さらにテールエンド寄りに行くとややローレール・フォイルに変化するのにともなってほんの少し現れる。
うー、洒落たトリックである。

で、デッキのインセットはディープなブルーティントでインレイされて、アフターサンドで白い矢印ラインが樹脂パネルされてます。
ここ、たぶんなんだけど、というのはこの矢印ラインの白は巻き色の白ピグメントよりもベタっとした雰囲気です。

で、ライン際はすべて細い黒樹脂ピン(か、インクかな?)で締める、と。
さらにボトムのウイングまでのパートをアウトラインをトレースする同じく細い黒ピン。

どうでしょう、すべてが調和してるだけじゃなくて、この板を造るビルダー達のイメージとエネルギーの揃いっぷり!

サーフボードデザインの歴史の中には、過去の作としてだた引き出しにしまっておいてはいけないデザインがたくさんあります。
全部引っぱり出しゃあいいってもんじゃないし、その磨く素材選びの目利きはかんじんです。
そしてこの、PAVEL V-Land、オリジナルアイデアを発展させて眼の覚めるような新しいサーフデザインに導かれました。

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ですから私も、カラーワークをただ奇麗にまねしただけじゃないですよ。
真っ白に見えるけど、ほんの少しクリームを落としたボトム色は濃いオパークで、わずかにストリンガーを透かす。

デッキのインセットはディープなロイヤルブルー・ティントだけど、実は白の矢印ラインもカットのインレイでボトムの巻き色に揃えました。
白の中にも透けたストリンガーがね、いいなーと。
インレイでカットしても、健ちゃんのカットはすべて一切フォームにかすりもしない大技で、もう一丁フリーラップを巻くので強度はガッチリ。

で、細い黒の樹脂ピンはオリジナルよりほんの少しだけサイズを上げて仕上がりのボリュームと立体感が強調されるように。
さらに細かい仕立ては、PAVELラミネート(デイケール、ですな)とワンオフ製作するフィンカラーを揃える、地味派手な仕掛け。

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こういうことはどんなマガジンや、ましてやサイトをほじくってもたぶん出てきません。
実はですね、こういうことの知識は、この話の目的じゃないんです。

みなさんも私たちもサーフィンが大好きですよね。
いい波と風はまずはとにかく何より、です。
サーファーですからアイデアや遊び方を追求すれば、今度はサーフボードです。

だからサーファーがサーフボードを造るというマストが乗り手とサークルでつながるという、今どき世界中探してもなかなか見つからないサーフィンの特別な現象として揺るがないんですね。
少しでも多くのみなさんにサーファーがサーフボードをどう造っているのかをリアルに知っていただきたい。

サーフィンのためのサーファーによるサーフボード造りだから、熱いんですよ。

コマーシャルなメディアさんにファッションはおまかせして、ここBackdoorページで伝えたいのはそういうこと。

しばらく後から分かる、ってくらいのものが盛り上がるし、やめられないよ!

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