
Small Company
例えば友達と楽しく波乗りして遊んだ晩に飲みながらとかね、話してる時に、"へそ曲がりで言うワケじゃないけどさ"なんて言っても、その時点でそれはどうしてもすでにいくらか曲がってるらしい。
エムズはモロにサーフボード屋で、長くやってる間には波乗り必需品以外にも、身につけたりシンプルな着物なんかもずいぶん売ってきました。
ウチの店は特にファッション屋さんじゃないから、そこはそんなにムキになるとこじゃないんだけど、なぜか昔からサーファーがこだわっちゃうアイテムってのはあってですね、もちろんそれらはたいてい騒ぐようなもんじゃない。
Tシャツから始まって、ジーパン(ジーンズとは云わない)だサンダルだの、スニーカーだサングラスだの、そんな他愛もないアイテムね。
かなり昔、カリフォルニアのなんだかカッコいいサーファー達の様を見てかぶれた私たちなんかが、かぶれついでにマネしてみたら普通に快適で、そんなとこに力入れないってのがカッコいいじゃないの、と。
カリフォルニア正統とか追従なんて話じゃなくてですね、だって私らの波乗り文化の出元ですから単にサーファー式共有の流れ。
ファッションの気配くらいはありますよ、だけどそこ本気でファッションにまでしない手前で留めとく。
あんまり頑張らない、そこ。
力の入れ具合が違っちゃうと、波乗る人のバランス感に違和感発生っていうかね。
いい感じのTシャツと501と、実はサーファーの手作りした丈夫なサンダル、なんてのが暖かくなってくると普通の身繕いなんだけど、そういうのを一昔前(ふた昔かなー?、もしかして)はカジュアル系ファッション雑誌なんかがいろんなコピーをくっ付けてファッション化させたりもしたけど、実はこれってクラシックなんで、つまり流行っても廃らないから少しくらい流行るのも別にそんなにこわくない。
だからそれはずいぶん前だと思うけど、流行る気配に巻かれてみたってセットが去ってみれば案外普通に戻れちゃって、波に乗っても流行のカレントには流されないサーファーには前も今もおんなじってだけ。
まあそれでもさすがに今時見かける、ビーチのパーキングで衣装のお披露目みたいな空気にまではエスカレートしませんでしたな。
流行りごとにもほどほどにつき合って遊ぶのは、いかにも楽しい。
ところで、そんな中にもここしばらくの間には流行ったの廃ったのとはフェイズの違うことがじわじわと、それだけじゃすまないような、仕方ないけどいい気もしないような変化が起きています。
そういや、以前エムズがこだわって売ってたサンダルがいくつかあって、うんと昔はレインボーさん、ね。
こちらはずいぶん長い間サンクレメンテの自社工場!で手作りしてきて、地元というか国内でならどんなにボロくなっても直すよ、みたいなすごいことしてました。
実際のところは、やっぱサンダルですから、数年ガッつり履くと減るパートはばっちり減りますよ。
で、その工場にフロントにあるショップの壁には、いい加減ボッロボロになったサンダルがいくつもご丁寧に額に収められて、誰々さんが何年履いたレインボーサンダルである!、なんちゃっていっぱい飾ってあるわけです。
どうです、このバカバカしさ!いいでしょう!
何が気に入ってたかって、現代にサンダルをですよ、消費大国アメリカでですね、自社工場で手作りですわ。
だれもしませんよ、そんなこと。
そのレインボーサンダルさんも、近年やれニューヨークやらその他各国のファッションに敏感な土地にて人気が出てみれば、当然ながらはかどらない(いろんな意味でね)自社工場で作ってる場合じゃありません。
その後は工場にもお邪魔してないけど、その某国某地域製はそれはそれでやっていただいて、元の工場もそのまま同じようにやってたらうれしいな、と。
ちょいと次は覗いてみましょう。
でまあ、Rさんちがそういう流れになってきたので私が足を向けたのはやはりオレンジなんですが、サンダルマンさん。
ここはもともとはカリフォルニアの人らしいんだけど、ずいぶん昔にハワイに移ってそれでまたカリフォルニアに戻ってサンダルマンをファミリー経営してるというストーリー。
基本親方のオヤジさんとせがれの二人体制。
ここのがまた、Rさんよりもかなり頑丈な造りでコイツは持ちが素晴らしく良い!
こちらもその後、日本で販売されている業者さんができて、もしかして目についたことがある方もいるかもしれませんね。
これもまた今時、サンダルをアメリカだっていうのに手作りしている貴重な存在です。
私の行動範囲からちょいと時間がかかるのでここ数年お邪魔していませんが、おんなじだといいなあ。
こちらも次、顔出してみましょう。
そして、特にロングボードやクラシックなイメージに気分を引かれるサーファーはたぶんご存知、バードウェルは独特な素材と作りと、なにより昔ながらのローテク手作りボードショーツでそれこそ流行っても廃らないよ、の路線を地でいくラベル。
もちろんエムズもぼちぼち長い間扱ってきましたし、日本での輸入元を長くつとめた人物は知人です。
当のバードウェルといえば創業以来、親方は代替りしつつずーっと家族経営、つまり小さなファミリービジネスの典型でした。
そのバードウェルがビジネスを売却したと聞きました。
聞けば、新オーナーは割りと若い何人かのグループです。もちろんあるべきものはばっちり持ってます、そういう人たち。
ビジネス、売ったって買ったって誰も何にも悪いことないし、先をどういうコンセプトに導いたって外野の意の及ぶことじゃない。
で、確かなことは何もちゃんと知りませんが、例えばただの想像ですけどですよ。
その新オーナーのビジネスモデルが、ある程度大きなお金をぶっ込んでリアルにクラシックなラベルをドーンと広く、へたすりゃ(ヘタじゃないけど)世界的なブランドに化けさせちゃおうぜ、だとしたら。
なんにも悪くないじゃん!、いいじゃん!、今でしょそれ。
という声が聞こえても、そっちに向かって別に反論はしません。
でもね、ずっと何十年も続けてきた馬鹿げた(いや、失礼。ホントは馬鹿げてませんよ。最近は軽口を滑らせるとうんと叱られますからね)素材・造り・手間の末にできるあのバードウェルが無くなっちゃうんだったら、それはイヤだね。
だって、失うんですよ。
まあこれ、例えばの話で新展開がどうなるかも知らずに町場の与太話みたいな、たらればの話なんですよ、いまのところ。
日本だって、素材から純日本製の畳なんてとてもじゃないけど手に入らないとかいう話を聞いたことがありますけど、そこまで目の届きにくいものじゃなくても、もの作り日本を取り戻そう!って意識と行動がいろいろなシーンで高まってきていますよね。
でも無くしちゃってからじゃ、そうは簡単に取り戻せませんよ。
仕掛けで盛り上がる流行ものだけで、ずっとホントに楽しいわけないもんね。遊びのほんのパートにはいいでしょう。
だけど、流行りの仕掛けですからね、次の年かその次の年あたりには身にまとうのが恥ずかしいような、そういうものだらけはないよね。
私ね、お客さんでサーフボードがどうやってできるのかなんていうことに関心があるような人と話の流れが向かった時には時々お話しするんですけどね、サーフボードだってヤバいよ。
今はまだ比較的新しい世代の中にも、ホントに才能と熱を注ぐデザイナー・シェイパーがいくらかは現れています。
だけど、たくさんじゃありません。
たくさんいればいいかっていうと、それはそう簡単じゃないです。
サーフボードはシェイプを持った実体ですが、その真の姿は波の一部とでも言えるような自然のメカニズムがデザインされています。
私がちょいと遊びで板作りしたって、いつも私たちを驚かせてくれるあのサーフデザインにはカスりもしません。
ただでさえその特別なステージがあって、直接だろうと間接だろうとそういうステージで編み出されたデザインやその一部に、私たちみんなの波乗りは楽しませてもらっています。
しかもサーフボード作りというのは、貴重なそれも膨大な経験や才能や製作に関わるサーファー達の力に対してとても報酬の小さい仕事です。
今はサーフィンする人たちも、ファクトリーを見たことが無いということは珍しくありません。
ところで実際、その現場にはもうずっと長いこと若い人たちが仕事をしている光景を見ませんが、ちょっと驚きませんか?、波乗りの世界で、ですよ。
これ、どこかで聞いたような話ですよね。日本中、いや世界歩き的な旅番組でも見ると世界中で起きてますものね。
もちろん若い世代を責めません。すべての世代は連続してますから連鎖する理由の結果です。
自分だけ助かろうで言うワケじゃなくてね、私、エムズはですからそういう素晴らしい仕事の現場をサポートすべく私たちが預かるサーフボードの製作の仕組みを立体的にグローバル(ちなみに、なんだかこのグローバルっていう言葉はどうにも好きじゃないが、まあここは仕方ないのでね)化を進めてみています。
で、やるのと言うのとはどっちも無きゃイカンと思うから、今日はそういう話です。
一介の町人の私が偉そうで恐縮ですけどね、小さなビジネスがたくさんあるから世界はピースだから。
スマホとモマゲーにからまった仕事か線量計持つ仕事してなきゃ喰えない、なんて時代が来ちゃったらいけません。
小さな物事の向こう側にハートや人がいる感じのする処で生きていたい人たちも、たくさんいると思うんですよ。
サポートし合うの、肝心です。
