2015.04.16 UP DATE
Mandala Tri Plane Hull

最近、ちょっとハルの話題に触れていませんでしたからね。

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というのも、エムズはとてもいろいろなサーフデザイン、つまりいろいろなサーフボードをお届けしているものですからその日その日で、お客さん達から質問されたり買っていただいたりオーダーいただく板の種類がハンパじゃないくらいバラエティがあります。だからちょいと油断すると、おや久しぶりかも、なんてなります。

もちろんコレ、銘柄の話じゃなくて、板にデザインされているサーフィンの話。

もともと私たちの指向がそうですから、際限なく店にあるサーフデザインが増え続けているんです。

仕方がないですよね、面白いんですから。波乗りだもの。

さて、ハル。今日はその中でも私たちにとっての基準の一つ、マンダラのトライプレーン・ハルを取り出してそのフィーチャーと、さらにハルの歴史的な変化や進化なんかの真実にも触りましょうか。

しばらく前になりますが、ハルのサーフィン的特質と歴史なんかの話をサーフィン誌の依頼で特集記事を書きました。長い間にずいぶんたくさんの記事をサーフィン誌に書いてきましたが、一つのものを取り上げてボリュームのある記事を書いたりすると自分としてはひと仕事を済ませたような気分になったりしますが、よく考えるといくらサーフィン誌とはいえ、今はサーファーがみなサーフィン誌を毎号読むという時代じゃないですもんね。

よく考えりゃ、このbackdoorというページは思い切り純度の高い記事を自前で提供しようという意図で、言わばもともとエムズのサイト内のウエブマガジンという根性でやってきたものを復活したんでした。突っ込んだ話のためのウエブマガジンです。

ですから、以前にかなり突っ込んだものを書いた事があるテーマでも切り口を変えたりしながら何度でも取り上げることにします。

そういうわけですからハルについてだって、もうずいぶん紹介したような錯覚が私にはありますが、ちょいちょいお客さんから質問されたり話題になると、まだまだ体験していないサーファーのほうが圧倒的に多いんですね。

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さてハル、今回の出だしは、ちょっと乱暴なくらい部分的な側面を取り出して話を進めます。それにたぶん、単に板のデザイン解説にはならないかもです。ですからこの始まりのパートでお話しする成り行きもそれ以外のアイデアの歴史やストーリーがあって、ちょっとトリッキーですよ。

ハルの起こりの一つとして、60年代の終わり頃に起きたトランジション・ムーブメントの偶発的な出来事があります。60年代と言えば今で言うロングボードの時代ですが、その終わり頃には急激なボードサイズの短縮化が起きました。つまりかなり大胆で実験的なデザインが繰り返されるわけですが、昨日までサーフシーンにはロングボードしかなかった事を想像してみてくださいね。そんな中で実験しようとすれば、一番簡単な方法の一つは昨日まで使ってたロングボードをぶった切るという手があるわけです。切ったところをテキトーにリシェイプしてグラスでカバーしてフィンを付けて短い板の出来上がりです。あるいは折れたロングボードなんてそこいらにたくさんあるもんですから、その利用できるものを使うという手もありますね。

当時の多くのロングボードはアンダーエッジを持たないソフトなフォイルのレールを持ち、ボトムはそれに連係した、ざっくり言えばラウンドしたボトム形状を持つものが少なくありません。ソイツをぶった切る、あるいはその折れたものの各部の形状は当然ながらそのままですから、短くなってもその基本デザイン要素は同じですね。てえことはですよ、その時点でそういうロングボードがそのまま短くなるわけですからね、その格好はイマイチでも今でいうベーシックでトラッドなハルの特徴をそのまま持っているわけです。そういう切ったあるいは折れたロングボードを単純に短い板として使ってみればそれはハルの原型の一つ、そのまんまです。

当時はすでにローレイラーは登場していましたし、タックド・アンダーエッジも同様に用いられ始めていましたが、それはもちろんロングボードに組み合わされたものではありませんでしたから、当時のすべてのサーファーに体験されていたデザインではありません。

で、そういうトライやお遊びはカリフォルニアのあちこちで起きていましたし、今でいうハルとしてのサーフデザインとして計画的に起きたものでは無かったのですね。たぶんに偶然発見されたということです。

あちこちで起きた中でも、例えばマリブではどうだったか?

マリブに行った事がないサーファーでも写真ではよく見るブレイクの一つですが、あそこがちょっとでも"らしい"ブレイクをすれば肩がどんどん張ってきてそのシェイプがいつまでも続くような一種のマシンウェーブですね。しかもどんどん続くというだけでなく、その巻き方とカタチが独特でして、まあいかにもスピーディーに走りながら波のトップとボトムを上り下がりするようなアプローチがフィットするタイプのシェイプの波です。

以外と知られていませんが、その後ショートボード化が確立してハイパフォーマンスが追求され始めると、あるレベル以上に達したサーファーにとっては、その理想的なブレイクであるマリブはむしろちょっと退屈な波として、古いヤツのブレイク扱いの時期だってあったんですよ。

ところがハルの波乗り感触を発見したサーファーにとっては、ホントはすごくダイナミックなアップダウンを繰り返しながら実は相当な高速滑走を、しかもあえて控えめな最小のボディムーブによって繰り出すという、一種はた目にはその美味しいところを見えにくくしたサーフィンは格好のこだわりサーフィンだったワケですね。もうそこですでにへそ曲がりで、言わばオタクが始まっています。

つまりここでもう分かる事は、乱暴にいえばマリブありきのサーフボードなんですね。ところがマリブはそこら中にあるわけないですし、もちろんこれはブレイクのタイプのことですが、世界中探してもあのようなブレイクはめったにありません。

これこそハルが長い間世界に広まる事を阻んだ理由です。マリブ、あるいはそのようなブレイクをホームとするサーファーはともかく、ハルデザインの製作者達はいくらコマーシャルな態度ではないとしてもサーフボード製作が生業ならハルを体験した他所のサーファーやもっと広くあちこちのサーファーにそのデザインを提供したいと考えるのが普通ですね。ところが他所のブレイクで試すとハルの面白さはたった一つのターン感触だけでおわってしまうことが珍しくありません。だってマリブじゃないんですもの、1発のターンをすればその目線の先にさっきと同じシェイプが果てしなく現れる波なんてほとんどのサーファーのホームにはありません。だから1発か1発のターンでそのハル感触は終わり、その次にはぜんぜん違うターンやリカバリーやコントロールが必要な波が普通で、おまけにトラッドなハルはそういう動きやコントロールが苦手ときているわけです。

それじゃあ世界に広まるわけがありませんね。

で、製作者達は違う波でもハルのデザインが通用するようにいくつかのパートに変更を加えて、他所でも遊べるような板に仕立ててみるのですが、そうすると今度はハルの一番美味しい感触が薄まっちゃう。そんな風に、古くからの製作者達の努力にもかかわらず、長い間ハルはサーフデザインとしての発達を果たすのは難題でした。とても長い間、ハルはそういう理由で他所に出る事がかないませんでした。生息環境が違いすぎる。

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しかしながらハルのスイートな感触は、いつの時代もある種の感性を持ったサーファーを刺激します。そしてついにハルの絶対的なサーフ感触と多くの普通の波での適応性を両立した、それこそ革命的なデザインがほんのいくつかだけ現れたのです。そのひとつがマンダラのトライプレーン・ハルです。作者はマニー・カロ。

マンダラでいうところのトライプレーン・ハルというのはモデル名です。もともとトライプレーン・ハルというのはある種のデザインを表すもので実はぜんぜん違うカテゴリーでも利用されますが、とにかくそれをそのままマニーはモデル名にしています。ここを混乱なく理解するのには、ちょっとマニーはトリックを仕込んでいますねえ。普通っぽく見せて、いたずらなヤツだわい。

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あえて言いましょう。ノービスなままの感性は、例えば薄っぺたいピンチーなレールやうんとディープで丸ーい形状のボトムこそがハル、あるいはそうじゃないとハルじゃない、なんていう見せかけのセリフに吸いこまれたりしがちです。さらにその特徴に向かってエスカレートしたりします。これはですね、ハルのうわべを捕らえた間違いです。もちろんそういうデザイン要素もハルの一部です。

つまりマンダラ・トライプレーンハルは見せかけのハル要素の支配から解放されたデザインというだけでなく、ハルの波乗り感触の真髄を見つけて、その要素をまさに押し進めたデザインとブレンドを実体にシェイプする事を成功したとても稀なデザインとうことでなんです。

今日はちょっと辛めなトークもありましたか?。それもこのbackdoorページを復活させて、ちいちゃいけど真のメディアを目指す大事なフォーカスであります。

私達はそういう板を預かる以上は、みなさんに今日も楽しんでいただきたいというだけでなく、10年後にもっと面白くなっているようなお手伝いをしたいですね。上手いとか下手とか、そういうこと言ってんじゃないんです。波乗りはセンスを充実してこその、とても個人的な喜びですからね。そこを知るサーファーなら、波もシェアする術を知るってモンです。

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