surf with TIKI S-deck, Tristan
2023.12.16

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ファンタスティック・アシッドのトリスタン・モース、これまでに何度か紹介してきたように彼はさまざまな板、それもヴィンテージから現在までのいろいろなデザイン・シェイプの板を実際にサーフすることで自身のデザインへのフィードバックやヒントなどに活かしています。

特にヴィンテージと言われる板たちは、今でも普通に何の違和感なく通用するものからかなり手こずるものまで、それはもういろいろです。実は、通用するっちゃあ何でも通用するんですが、つまりそこは単に乗り手の技量だけとかじゃなくて、今の平均的なデザインの板の機能性をそのまま求めておいて(意識しなくてもね)、違うから通用しないとかいうのは論外なんだけど。

で、今日紹介するストーリーに登場するこの板は70年代(それも前半でしょう)のUK(イギリスですな)で作られた、TIKI surfboardsという銘柄のモデル名は分からないけど、Sデッキ・フォイル。

トリスタンのリポートによると、この時代のこのデザイン・シェイプの板としては速い部分もあって、何よりデザインが波乗りにデザインとして反映されている。

Sデッキというとディスプレイスメント・ハルに直結してイメージしてしまう人もいるかもしれませんが、そうだけではなくて、つまりこの板の生まれたいわゆるトランジション・エラのその直後と言っていい頃ですからまだデザイン・コンセプトやディテールにその時代の影響が散見できる。
この板のSデッキはノーズエリアのスイングウエイトを軽減して、ノーズのキックとそのボトムに見えるダブルコンケーブのワケとのコンボです。

*1分ほどのライディング映像ですので、エムズのインスタでご覧ください。
@ms_surf
でどうぞ!

波乗りリポートの中でトリスタンも触れていましたが、"この板の場合"はノーズのダブルコンケーブがレイトテイクオフなどでのノーズリフトをサポートしてくれている、と。
Sデッキフォイルの定型的な要素の一つとしてテールロッカーいくらかのVEEを持つとはいえかなりストレート気味で、かつこの板ではテールエリアの厚さがかなり大きめにされているので、そのコンケーブの働きを組み合わせたアイデアになっています。

レールはすでにその頃はポピュラーになっていたローレーラーで、それはそのままテールまでフォイルが通っていますが、上でも言ったようにボード後半ボトムには中程度のVEEで、トリスタンのターンでも分かるように板の形・ロッカー・ボトム・レール・フィンという基本要素が調和した働きをしているのが見て取れます。

やはりトリスタンが知らせてくれた話の中にはテールエリアの浮力(これは単にパートとしての事じゃなくて、フォイル全体のバランスがむしろ支配しますが)が大きくて、テーンによってはテールの踏み方をうまくやんなきゃいけないって。

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私はUKのサーフボードについては不案内で、それにしてもTIKIという銘柄は聞いたことが無くて、ですが実はなかなか良くできたデザイン・シェイプのようで、いい話を聞けました。

サーフィン界もサーフボードデザインもすごく実験的で斬新なアイデアが湧き出るその時代、ですからその完成度もまったく様々。
現代のようにSNSで簡単にうわべをパクれるわけでもなし、それ以前にブランクスが見習いクラスに大きなヘルプをしてくれるわけでもない。

私の勝手な思い込みみたいなもんだけど、そういう半プリミティブな時代・状況でのUKのプロダクトって無骨なイメージがあって、その思い込みをそのままでは失礼千万、と言うよりも無知が恥ずかしい。

面白いね、波乗りと板。