エイシン・ツインチン
2023.11.04

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佐藤英進、日本のデザイナー・シェイパーには珍しいほどデザインの創造に勇気のある奴です。そこがリッチ・パベルをして日本でただひとり教えを授ける理由。

世界中を見渡せばシーンのトレンド(う〜、嫌なフレーズだぁ)の何かをトレースした仕事をするシェイパーが多数派として増殖し続ける中で、いつもその人の創造品をそれも自然なモチベーションをもって生み出すシェイパーはどれほどいるか。

佐藤英進はすでに世界にも通用する素晴らしい板たちを作り出しているシェイパーであるけれど、もちろん向上の途上にある。

世代的にもキャリア的にも、彼のデザイン・シェイプは先人たちのアイデアに触発されているが、そのアイデアを解釈することを欠かさないしその態度が当たり前だが真面目で大胆。

前書き長くなったけど、今日はその中から現在のストックは1本だけなんですが、ツインチン。

この板のように見た目にインパクトのある景色(チャインね)を持っていると妙な勘違いされることもあって、つまりその派手なとこが"クセがありそう"とかね。
クセ?、そんなの無いです、この板。

それどころか、パドルもテイクオフも、つまり波に乗るまでのプロセスはいたって上等で早いテイクオフの少し前には滑りの速さが先に迎えに来る。このスタンディングする少し前から波乗りが始まる感じには理由があります。
そして波に乗ってサーファーが行動を起こすと、この板の明るくてポジティブなキャラクターがすぐに現れます。

この板のとにかくの特長は、回転や移動方向に向かう積極さと速さとその移動量です。で、それは扱いの軽さにもなっています。
この軽さは悪いことじゃなくて、手応え・足応えと座りの良さがちゃんとあってそれでいて軽い。
ちょうど私は最近この板にセットするフィンの選択もあらためて試しているけれど、フィンの性格によってそういった要素のどれかが出たり引っ込んだりするもんで楽しい。

この板が持つ両側のアンダーレールのチャイン、変化する面を分ける峰、そしてその変化した面に施されるコンケーブ。
このチャイン、実は古くからあるアイデアのひとつですがアンダーグラウンドだったものを、リッチ・パベルがしばらく前に作り直してイージーワイダーでお目見えさせたデザイン。

チャインそのものはボードと波・水との位置関係の中で重点的プレーンパートの切り替え的な役割をしますが、それはつまりリフトの力を受けるパートを分散から集中させるような働きなので動性の効率がアップする。
それがサーフボードと波乗りに置き換えられると、動きの速さや量になり、効率が上がるんだから操作性は軽くなる。
理屈っぽいけど、何にでもワケってものがあるんで、これそういうことです。

結果的に、チャインは同時にそれ自体がエッジとしてのプレーン性も持つわけで、佐藤英進がこのモデルにデザインしたボトムが持つノーズから始まっている割りと明快なVEEを分けるエッジなどとも合わさってマルチエッジとも言えるプレーニング・デバイスとして速さを追加しています。

で、それらの働きが機能だけじゃ面白くないんで(それもいいけど)、サーフボードの場合はそれがキャラクターや感触としてサーファーにこの板だからのアイデアを呼び出します。

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この板いいよね!、だけじゃなくて、楽しいよね!、てことです。