マイカル・ピーターソン、て感じの音になるでしょうか、この板の呼び名。少し、ダジャレ入り。
1ヶ月ほど前に、リリースのお知らせをしたモデル。
ビクター・レアンドレくんもさっそく1本入手。サイズも、7'6"。
このモデルの特徴はファンタスティック・アシッドの中でもある意味で変わってます。
*このモデルのコンセプトとデザイン・シェイプは紹介ポストで詳しくご説明しています、こちらの12月25日のポストで
http://ms-surf.com/topics/2022/12/fantastic-acid-40.html
トリスタンから届く何度かのリポートを読んでいると、この板の立ち位置と波乗り感覚がだんだんとわかってきます。
紹介ポストでも書いたようにこのモデルの特徴は、あえてハル度数(そんな言い方、ないですけどね)をやや抑えてだけど明快にハル感触をライダーに伝えつつ、VEEパネルで構成するボード後半のボトムデザインによってある意味で最も簡単で滑らかなコントロール性によるターン性との合流。
(ちなみにここで出てくるVEEパネルのVEEデザインと強度は、同じくアシッドのモデルラインナップにある、V-BOTTOMとはかなり違うもので、70年代中盤から80年代後半まで主にテールエリアに最も一般的に用いられたボトムデザインです。)
結果としてのこのコンセプトと波乗り感覚の狙いは、板の全体的なフィーリングをやや控えめなハル感触で包んでおいて、サーファーも波も選ばない普遍的なターン性・コントロール性で操作性をまとめるといったサーフデザイン。
ここまでだけだと、発想そのものがちょびっと地味。
モデル名にも引っ掛けてあるように、MPことマイケル・ピーターソン全盛時のサーフィンが当時のシーンに及ぼした影響とそのボードデザインの基本骨格が、長年にわたって多くのシェイパーたちが度々取り上げてきたテーマでもあります。
ここで言う多くのシェイパーたちというのは、主にハル周辺に身を置くシェイパーですからマジョリティではありませんけれど。
そのエリアから発せられる板の中に、MPというワードが時々聞かれることがありますね。もちろんそれらはその作者によって、波乗りのどの要素をどう強調したり組み合わせたりというポイントが違います。
実際、あるベテランシェイパーがラインナップの中心に据えるあまりMPデザインとの関連性と捉えていないモデルがありますが、そちらはとても穏やかなTPHから、テールエリアに向かっては、ほぼフラットパネルに近い働きにまで強度を下げたわずかなVEEを溶け込ませるという手法のコンビネーションでまとめられ、コンサバティブな乗り味がフィットするサーファーに喜ばれています。
大きく見ればその板も同じようなカテゴリーに属していて、実は広く多くのサーファーに喜ばれるカテゴリーのサーフデザインと言えます。
マイカル・ピーターソンにトリスタンが込めたサーフィン性は、やや抑えたハル強度とはいえ、あくまでベリーを用いた上でレールフォイルとそのピーク・ポジションをこのモデルのための形状・位置関係に求めて、テールに向かうVEEパネルも強くなり過ぎずなおかつコントラストをキープして、味の薄いハルにはならないというもの。
そしてまたここからがひとつのキモ、このマイカル・ピーターソン・モデルにおいてトリスタンはMP自身のフィンセッティングにも注目しました。
つまりそれは明らかにテール寄りにセットされたフィン。もちろん板全体とのコンセプトにパーフェクトにフィットするテンプレートとフォイル。
そこで板とフィンの両方のデザインとフィンポジションは、当然ながらテールロッカーのプロファイルとVEEパネルの変位性と同調しながらの立体的な作業です。
このフィンセッティングを追求したのはあの有名な例の板での(MPはある限られた時期だけ見ても、自身のシェイプによるいろいろなデザイン・シェイプを乗り分けていますから)MPのカットバックシーンに象徴されています。
いくつかの場面で見ることができるあのカットバックは、クイックな動きも大きくいつ見てもかっこいいものですね。
戻す方向が割りと横方向の動きや斜め下に向けた動きなどのバリエーションはありますが、どれもひとつの特徴としてそのカットバックの最初の回転はピボットな傾向を持っていることです。
つまりあの最初の回転動作は、例の板に施しているフィンとフィンポジションとのセットです。
トリスタンはこのモデルにその要素を盛り込んだことで、このカテゴリーの中で似たもののない存在にしています。
オタク、のやることなんで、おそらく発想でそういう存在を目指したのではなく、閃いたコンセプトを姿にしていったらそういう存在になった的な流れだと思うのですが。
カタチだけ見れば派手さの無い、というよりもちょっと地味な空気をまとった板、ってとこが却ってとてもくすぐられます。
いつでもどんな波でも乗りやすいと言えば、もう文句なく乗りやすいんだけど、飽きさせない動きのキャラクターを持っていて似たもののない個性も備えてる。
乗り手が何も準備しなくてもそのまま振る舞える板。
ところでどうでもいい話で恐縮だけど、普段からファッションな話(の、じゃない)とは距離を置いてますが、トリスタンと付き合い始めてから、彼やその周辺の連中の様子の格好良さにはいつも新鮮な気分にさせられます。
この種類の新鮮さは大げさに言えば私にとっては4、50年ぶりみたいなもんで、当時カリフォルニアのサーファーは同じ国の他の人々の中でだって格好良かった。
もちろん例えば#501とTシャツだけだって、なんかケツのあたりからして様子が違う。そりゃ、体型がとかなんとかの話もあるけど、それを身につける態度が違う感じ。勝手にそう思い込んだ、だけでもね。
そのカリフォルニアも今ではどんなにかっこいいサーファーだって、コマーシャルなファッション業からデリバリーされるアイテム以外のものを探す方が難しい、かもしれん、という時代と環境。
トリスタンがね、ぜんぜんファッションしてなくて、いやにいい雰囲気で着ているもの見て私が、"そんなのどこで見つけたのよ?"、なんて訊くでしょ。で、その種明かしを聞くと、そりゃもう面白いですよ。超新鮮!
いきなりフランスびいきに鞍替えじゃなくてね、そういや思い当たるのは、"君たち、この中から選びたまえ"っていうのには反抗する、"目を向ける先は自分で見つける"みたいな人たちなんだろうなあ、というのが私はかの人々に昔から抱いている印象。分からんけど。
だから板もああなるのね、と。
オタクだなあ!、と思うのはこっち側からだけ。もう、無制限で好きなだけ。それをこちらの言葉で説明したら、オタクってワードを選んでしまうのはつまらない世界の始まりかなと、ちょい反省。