Dismetric Hull, part 2
2021.11.08

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ちょっと日が空いてしまいましたが、今日はトリスタンからのライドリポート、10月15日のポストの続きです。

この板、Fantastic Acid, Dismetric Hull / ディスメトリック・ハルの生い立ちについては10/15のポストでご覧いただくとして、そこでも紹介したようにこの板はすでにシーンの一般的?なアシンメトリックのどれとも違うサーフデザイン指向を持っています。

それはあくまでこの板がディスプレイスメント・ハルである、ということによります。
つまり非対称デザインによって生み出せるメリットを、ハルライドらしい特長にさらに積み上げるというやり口です。
後でトリスタンのリポートの中でも出てきますが、このモデルが高いマニューバー性を獲得したハルに出来上がっているのはもちろん、いわばバックフット・ドライブによる加速の自由度と俊敏性・応答性の高さという特長。

板を見てみましょう。
アウトライン、あからさまな非対称は失敗ってチンバになったんじゃありませんよ。
ひとつの見方としてストリンガーを中心線として見てみると、バックサイド側がやや幅を狭められていることが分かります(トリスタン、レギュラーフッターなので、つまりデッキから見て左側)。

ノーズは細身です。
これはターンの回頭性のキャラクターが、いつものハルが広めのノーズとその敏感な形状とボリュームのレールにカーブたっぷりのアウトラインが長いレールラインのリフトやダウンザラインでも、まるでノーズからラインに吸い込まれるような回り方あるいは走り方をするのに対し、このモデルの場合はボード後半からテールでターンそのものを完結させる指向に寄せてあるからです。
ですからノーズからは幅もマスそのものも削ぎ落とした、と。


211107_DMH_1.jpgボトム、見てください。
ノーズからボード中央部まで、例によってディープなベリーが見えますが、ベリーのピーク(ボード中央線の左右)は大きめなカーブにされて、これはきっとボード後半に施したコンケーブエリアへとつながるボトムのコントラストの強い圧変化をギクシャクさせずに滑らかにする工夫でしょう。

ボード後半にはスパイラルVEEがほどこされますが、ここにもデザインがあります。
まずはベリーのアンダーレール側の面がちょうどセンターフィンエリアの入り口まで、その幅を徐々に絞りながら残されつつ、フィンエリアでエッジに集結するという、まっこと納得のアイデア。
もう一つはその内側に与えられたコンケーブが、それぞれのサイドの性格に合わせて掘り方・デザインが変えてある点。


211015_DSMH_2.jpg次にユニークなフィンセットアップ。
フロントサイドだけに2+1セットアップに相当する働きのサイドバイトを持つ、いわばシングル+1。
このテンプレートがセンターフィンと共通させた思い切りの良いカタチ、走りの伸びを求めたベースとターンのリリースを高めたトレール側のカーブとチップ。

フィンをテールと一緒に観察するとおもしろくて、アウトラインでテールを見るとバックサイド側は幅を狭めてあるのにテールの丸く小さいカーブ、逆にフロントサイド側はよりストレートに近い大きいラインでエリアを稼いでおいてテールエンド近くに来てキュッと丸めてラインを集結させてる。

てな事もろもろをまとめてこの板、ディプレイスメント・ハル道を決して踏み外さずに、つまりハルの振る舞い・サーフスタイルのダイナミズムの中にあるマニューバー性を強調したサーフデザイン、ちゅう事です。

もともとマニューバーの自由度の高いフロントサイドでは縦の動きやトップでのカービング、そしてクリスピーなリップアクションまでカバーし、バックサイドではボトムターンのコントロールと今日的カットバックを容易にしたアシンメトリック・ハルの登場です。



さてここまでもトリスタンから届いたライディングのリポートを含めて紹介してますが、ここから写真とクリップも見ながらさらにリポートを紹介しましょうね。

これ、クリップです。
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けっこうなサイズの波です。
ボトムターンにさっそく特長が表れています。ボトムに降りてかかと側テールに乗る流れが、いかにも楽にスムースにあっさり済んでます。
しかもボトムターンの後半でより後ろ足に荷重を寄せて前足の膝が緩められる流れでは、ここでも板のほうから上がろうとする様子が見えます。

このような動きは良くできたアシンメトリックに共通するところで、バックサイドへの導入部あるいは乗り換え部、例えばフロントサイドのレールを抜くだけであるいは踵側に乗るその瞬時にすぐにバックサイドターンが起動する。その前の動きを終わらせて次の操作に入るという普通の感じじゃなくて、前の動きが終わるそれがそのまま逆サイドの動きやターンに前乗りするような動きの流れです。

またリポートによると、波の前の壁がバンバン出てくるセクションではハルの約束通り前足から踏んでいくポジティブなダウンザラインで、ボトム前半のベリーによるもろにハルの吸われる突破加速はいつものように最高だ、と。


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リポートではトリスタンはここしばらく多くのセッション、あらゆる波をこの板で積み重ねているとの事です。
その中にはこの板本来のターゲット外の膝波もあって、当たり前に普通に乗れるけどそういう波ではこの板はつまらない、と。だって動きが面白い板なのに、立つだけじゃあね、さすがにね。

ですからトリスタンのお勧めは腰腹でもシェイプと速さのある波以上、ちょいとサイズのある波はもちろんです。

さて、そんなわけでこのモデル・Dismetric Hull、次のオーダーではストックも何本か、もちろんカスタムオーダーも受け付けます。
ご心配なく、パドル時の直進に対する非対称な違和感もクリアしてます。
気になるみなさんはぜひご相談ください!

おっと、ちなみにトリスタンのこのパーソナル・ボード、7'0"。