グラスプロセス、意外と知られていない話
2020.07.04

と、ひとことで言っても、グラスプロセスには大小さまざまな、それはもう膨大なノウハウやシークレットがあります。

その中から今日は、質問の多いポイントをひとつ取り上げて説明してみましょう。
それは、フィニッシュについて。

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みなさんよく聞く言葉に、サンド・フィニッシュとか、ポリッシュあるいはバフ仕上げなどというフィニッシュの違いがありますね。
サンドはツヤなし、ポリッシュは光沢ピカピカ。

現在一般のマーケットには色々なカテゴリーを通して、サンド・フィニッシュが比較的多く見られます。
リーダー的なブランドの後ろを追って、ブランドは違ってもフィニッシュもカラーも似た顔つきだったりもします。
ちなみにエムズのラックにはブランドや製作者によって顔つきも色々な板があって、たぶんポリッシュの方が多い。

で、今日はそのサンド・フィニッシュの話。

パッと見にはつや消しみんな同じに見えるかもしれませんが、プロセスと機能性には随分と違いがあります。

現在多く見られるサンド・フィニッシュ、例えばそれはプライスリストなどでそれぞれのモデルのベースプライス、つまりクリア/サンドフィニッシュとしてカラーやオプション無しの基本としてとらえられていることが多いはずです。

それらの多くの例を、私たち(もちろんエムズ・山王ファクトリーでは)はホットコート・サンドとして区別しています。

すごく簡略化して説明しますね。
サーフボードがシェイプされて次のプロセスはグラス・ラミネーションです。
ラミネートレジンでガラスクロスをラミネートします。例えばレジンカラー巻きと呼ぶカラーリングでは、この工程でラミネートレジンに顔料を混ぜてラミネートします。
その次にホットコートレジンをコートします(両面に塗ります)。

ラミネートレジンでのラミネーションのサーフェイスは、そのままではサーフェイスを整えるためのサンディングができないのでホットコートするのですが、これが済むとボード表面は完全硬化した状態でサンディングができることになります。

当然、このサンディング工程ではラミネート・グラスをできるだけ削らないように(オーバーサンディングというやつです)技術とノウハウが発揮されるべきです。
なぜならオーバーサンディングされてしまうと、ラミネートされたグラスファイバーが本来の強度や機能性を持たない。だけでなく、ボードの形状を変えてしまうのと同じことになります。
これを、そんくらいじゃ変わらねえよ、と言ってしまうなら、もともとシェイプなんてヨレヨレでいいわっていう板にお金を払う太っ腹な話、脱線ですが。

ホットコート・サンド、つまり一般的にサンドフィニッシュと呼ばれている多くの板はこの仕上げです。
ホットコート・サンドのバランスは、ラミネートグラスに触らずに(削る際に)サンディングするという条件のためにホットコート・レジンをボード表面に多めに残すことになります。


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一方、私たちのサンド・フィニッシュは、ちゃんと言うとウェットサンド・グロス・フィニッシュと呼びます。
つまり通常のサンディングではラミネート・グラスにできるだけ触らないようにしつつ、"できるだけ要らない"ホットコート・レジンを削り取り、これがシェイプを最大限再現したボードの姿でもあります。

そのサンディング後、本当に仕上げのためのグロスレジン・コートを両面に塗るのです。
そのレジンの硬化後、空研ぎ〜水研ぎと我々が呼ぶ作業に進み、最後のつや消しあるいはツヤツヤの各仕上げにい別れるわけです。

ホットコート・レジン、これが時にくせ者でして、この量が多いあるいは硬化プロセスが適切でないとボードの強度はむしろ下がります。
またケースによってはクラックにも弱くなったり、ボード自体が本来持つしなやかさをスポイルします。

ホットコート・サンドは、もともとショートボード・シーンで軽さと強度の左右の手のバランスが軽さを優先する常識に移る過程で一般化しましたが、同時に手間とコストを省けることもあり、今ではオルタナティブ・シーンでもほぼ一般化しました。

ケースによりますが、数量を拡販するタイプのボードメーカーのプライスリストを見ると、同じサンド・フィニッシュがウェットサンド・グロス・フィニッシュは比較的高額のオプション扱いであったりすることでその差が分かります。

かなり贅沢ですし、また一般的にはそこまで手の込んだプロセスはマストではないのですが、私たち山王ファクトリーではこのホットコートそのものの時点で、たいへんアドバンテージの高い社外秘のテクニックをオプションで持っています。
脱線ですが。

つまりそれほどホットコートというプロセスはボードの機能性を左右するので、私たち山王ファクトリーと、エムズで扱うほとんどの板では、ウェットサンド・グロス、もしくはグロス・ポリッシュという理想的なプロセスを施されたフィニッシュのボードたちです。

ちなみにエムズの代表的なブランドである、PAVEL / 山王。
例えばレジンカラーやフィンパッチ、またそれぞれの板のためのフィンのワンオフ製作などを含んだ仕立ては、多くの皆さんが求める基本形として提示しているので、ベースにプラスあれこれオプション乗せ的な扱いではありません。

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サイトに掲載している各ブランドのストックには、一般的にオプションとして扱われているプロセスとテックがいくつも含まれている板がずらりと並んでいます。

そんな目でストックリストを見てみていただけると、価格とクオリティのバランスに気づいていただけると思います。