PAVELのイージーワイダー、とても人気のある、そしてどんどん高い評価が知られてきたモデルです。
イージーでワイダーだから、浮力があって楽チンみたいな板って思われがちですが、まあもちろんその通りでもあり、そんなもんじゃあとても説明がつかないリッチ・パベルならではのとても高度なデザイン・シェイプを与えられた、とんでもなくポテンシャルの高いモデル。
まずはこのプラットフォーム、リッチお得意のバランスのひとつで、独特なカタチでもあります。
いつも話題にするように、リッチはホントに数え切れないくらいのデザイン・シェイプのバラエティ引き出しを持っていますが、それだけでなく私がいつも驚かされるのはそれらがまるで同じデザイナー・作者が生み出す物とは信じられない姿・景色・顔つきの違いを見せます。
このプラットフォームの特長の一つに、とてもいろいろなボトム・デザインとフィンセットアップに対応し変化することができるという点があります。
Easy Widerの大きな特徴が、ボトム・アンダーレールに施されるチャイン。
チャインとはちょうど前足のスタンスの前後のアンダーレールに渡る、円弧状に囲まれたベベルのあるプレーニングパネルです。
このような派手に面のフェイズを持ったパートをボトムにデザインするのは、とても高度なデザイン・シェイプの能力が必要になることは想像がつきますが、もちろんその通り。
その円弧状に面を形づくるラインが峰のようだから、チャイン。
このチャインはその見た目の通り、ボトムの中でいきなり独立したパートを成すので波乗りに及ぼす効果はとてもくっきりしています。
チャインはターンに働きます。ターンにエクストラ・プレーンを加えるので、つまり速さ・伸び・回転性がさらにプラスされます。
と言うと簡単だが、物理的にあからさまなゲインが得られるので、そのそれぞれのプラス要素に力というか、"身"とか"中身"とかが詰まっているのです。
速さだけでなく、勢いが加わる。
で、しかも、ここがサーフィンとサーフボードの関係の面白いところなんですがその"身"があると、たとえボードにボリュームや重さがあってもそれらを軽減してしまうという効果も起きるわけです。
またチャインにはテイクオフの早さや、波のトップでのノーズ寄りエリアのリリースの良さという効果もあります。チャインが水のリリースを促すのです。
テイクオフ時にはノーズ寄りのチャインの峰がエッジとなってプレーンを促し、そのチャインに挟まれたボトム中央部は細身のボードのように波をキャッチする時の"落ち"を早めます。
またボードがボトムからトップに駆け上がって板を返す時には同じくノーズ寄りのチャインの峰がノーズの水離れを促します。
それらのいくつもの効果が、ボトムデザインの自由度が高く幅広のプラットフォームとボリュームを持つこのモデルの特徴と組み合わされた時、その幅は基礎機能にのみ働きつつ波乗りすれば幅の広さを感じさせない。
同じようにボリュームも、浮力やその反発力に働きつつ、操作そのものははるかにボリュームを控えた板のように軽い。
いつも話題にしますがPAVELボードは、デイリーサーフで頻度の高い日本のサーファーにとっての小さなあるいは小さめな波、パワーのない波、シェイプの良くない波、そういったコンディションをすごく楽しい波乗りに変えてくれます。
しかしながらですね、そんなことは当たり前、騒ぐ話じゃない。普通以前。
PAVELのそれぞれの板のフィーチャーが爆発するのは、ちょいといい波やいいセクション、そういったその日のトピックな場面です。
そこで大化けするのが、いい板ってもんです。
イージーワイダーももちろんソレ。
小さな波では2回りも長い板のような波のキャッチとスピード、そしてずっと短い板のような軽いターンの操作性、そういう波でも楽しい波に変えてくれる加速性と走りの速さ。
いい波では、それらの性能はさらに高まりx2、爆発的なスピードと動き。
ちょうど昨日の朝は私もイージーワイダーで波乗りして1本の特にいい波をいただき、この板の爆発を味わったところでした。もう完全に、板のおかげ。
そして昨日はちょうど佐藤英進と電話での打ち合わせをすれば、彼も自身のシェイプによるチャインで波乗りしたその日。
佐藤英進はリッチ・パベルから多くを学び、すでに自身のブランド・EISHINでチャインデザインをローンチしています。
英進もその日の波乗りでチャインの特性とメリットをさらに体感して、二人して盛り上がってお互いの話を交換しました。
ちょうどもうすぐ英進はニューモデル、TWIN CHINをリリースしますが、これは少し前のトピックスでも紹介しているようにミッドレングスのツインフィンにチャインを組み合わせたデザインで、コンセプトとアイデアをまとめて私がリクエストしていたモデル。
すでにその予告紹介を見てくれたサーファーからのオーダーもいただいています。
昨日の会話の中で英進は、今度のTWIN CHINはバッチリな板になりますよ!、と。
ちなみにこの、TWIN CHIN、チャイン / CHINEなのになんでCHIN、と名付けたか。
と言いますと、ツインチャインだと語呂が?、だったのでツインチンが言いやすいし。
CHIN / 顎、をアンダーレールをレールの顎に見立ててかけてみた、まあダジャレ。
今日は名器イージーワイダーの強烈な特長を生み出している、チャインのお話しさせてもらいました。
ちなみにイージーワイダー、2+1セットアップ仕様では、シングルフィンと2+1はもちろん、ツインフィンでも楽しめます(写真には色と光の様子でチャインがよく見えないけど)。
私、ここんとこほぼツインフィンで楽しみますが、例えば漕いで立って滑ったみたいな波で(あるじゃないですかそういう日、天気と風が良ければ浮かれて波乗りしたくなる)ログ以外の選択をしたい日は逆にドラッグ最少・滑走最優先仕様のフィンを選んでシングルフィンに模様替えしています。
もちろんツインフィンほどの積極的な回転性まで求めなければ、2+1セットアップは安心のオールラウンドです。