Fantastic Acid, FISH HULL
2023.07.01

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こういうこと、よくあるのですが、同じ板(モデル)について色々なお客さんから質問されるので何度となく説明しています。
それはショップでだけでなくエムズのサイトでも何度も色々なかたちで取り上げていて、つまり説明し尽くしたと勘違いするわけです。

そういう説明に接していない人はたくさんいるのが当たり前で、ここのところはトリスタン・モースによる来日山王製作のおかげでファンタスティック・アシッドの色々なモデルについてのご質問が多い。
で、たまたま山王ファクトリーでの作業順によって FISH HULL / フィッシュ・ハルの巻きが進んでいることもあって、このモデルについての質問も多くなっています。

ディスプレイスメント・ハル専業メーカーであるファンタスティック・アシッドには、トリスタンや私がピュア・ハルと呼ぶ、つまりオーセンティックなデザイン・フォーミュラを満たしたそれも純度の高いデザイン・シェイプのハルと、ハルのディスプレイスメント性をどっぷり持ちつつ違うターン性・動きの性格を組み合わせたモデルがあります。
フィッシュ・ハルはそういう板。

以前もこのサイトのどこかで書いたことがあるのだけれど、このフィッシュ・ハルという命名そのものがちょっといたずらで、単にスプリットテールを持つことだけで名乗ったわけではないし、とはいえピュア・ハルの形から平面的にフィッシュのようなものを切り出しただけでも、もちろんない。

よく出来きたスプリットテールによる魚的物理性だけでなく、その独特なテール形状にコンセプトを見事に調和させたフィンのカタチとフレックスパターンが生成するターン性・動きの性質は似た物のない無双のサーフデザインです。

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一つ興味深い話を紹介しましょう。
先日、トリスタンが滞在中に波が上がったことが2度ほどありましたが、山王の健ちゃんは"せっかくだから〇〇のいい波に乗らせてあげたい"ということで、しかしそこは全くクローズなスペシャルなブレイク、付き合いの深いメンバーに話をした上で波が出てきたある日に健ちゃんはトリスタンを招待しました。

帰った2人からリポートを聞くと、それほど大きくならなかったようで、それでもトリスタンはすごくいい波に何本も乗れたよ!、って喜んでいましたから、限られた日程の中でその波を楽しめたのだからラッキーです。

何日か後、たまたま健ちゃんを訪ねてきたそのメンバーの一人と話をしていたら曰く、"彼(トリスタンね)は波乗り上手いね〜!"。

いい波を深くボトムターンしてさ、すごい速さでドーンと伸びていった先のトップで思い切りぐり〜んてカットバックしたらそこからまたすごいスピードで戻るの!!、あんなサーフィン初めて見たわ、と。
でさ、あの変わった板(滞在中、私から奪い取ってヘビロテしてたフィッシュ・ハル、のこと)で、すごくいいサーフィンよ、とも。

まあもちろんトリスタンのサーフィンが上等なのでそこは差し引きしなきゃならないとしても、この目撃情報にフィッシュ・ハルの特長がよく現れています。
ハルのディスプレイスメント性はボトムからの強烈な突出スピードに出ていますが、この板の場合ボトムからのリフト成分だけでなく、テールとフィンの特性をターンの伸びの距離とスピードに生かした様子を語っています。

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この板、例えばボトムターンで言うと、波側のテールとフィンの明確な支配性の高さがあります。
そしてこの独特なフィン、ハイトが低くベースが長い。そして片面フォイルでありながらディープなフレックスで、上下方向のフレックス成分よりも左右方向のフレックス成分がより大きい。
これが、ターンで求めたディレクションへの伸びを強調しやすい要素を持っている理由。
合わせて、スライトVEEフェイズでスプリットされた深い切り込みの各テールのボトムにはスライト・コンケーブ。
これらが協調した性格。

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このトリスタンのサーフィンで説明できるだけでなく、日常的な小さな波でも同じ特長はモロに発揮されます。
ディスプレイスメント・スピードの純度と、小さくも大きくもスッキリした感触の連続性を保つカービング性の両方を持った板、そういうサーフデザインです。

ちなみにアウトラインをお見せしている2本、長い方は7'0"、短い方は6'2"です。

そういや、私自身も含めてこの板を手にしたサーファーの多くが同じことを言うのですが、テイクオフの不思議な早さ・速さ。
いい板、テイクオフがいいのは当たり前ですが、実際に早く・速いだけでなくこの不思議感はもちろんホントで、アスペクト比の大きなフィンによるロングベースと低ドラッグ、テイクオフ時にはリフトデバイスとして働くテール x 2によるテールの速さ。