12'2" Kookbox
2022.08.31

220829_KOOKBOX.jpg
以前のロケーション、港北のショップ時代はこのボードも立てて正面から見えるように公開していましたが、現在はショップの奥にしまい込んでいました。
それでもめざといお客さんは奥に見えるこれを見つけて、"あれはなんですか?"、と。

通称、Kookbox / クークボックス、です。長さは、12'2"。
もしかして、いやおそらく日本では最も少ないボードでは無いでしょうかしら。

1930年代のカリフォルニアで大変ポピュラーだったサーフボード/パドルボード(プローンあるいはニーライドでパドルするスタイルで、パドルボードそのものが一つのウォーター・アクティビィティ)です。

クークボックスという、この名で呼ばれるようになったのはそう少し後年のことで、当初は開発者であるトム・ブレイクの長そのまま呼び名だったようです。

その時代のサーフボードはと言うと、単なる厚くて平らな長い材木と言えば早い、それも主にレッドウッドを多用する恐ろしく重いプランクと呼ばれるものが主流。
そこに登場したトム・ブレイクが開発したこのクークボックスはプランクたちよりも軽量(だが、重いよ、もちろん!)で内部にリブを持つ中空構造によって浮力も得やすいもので、サーフボードとしても選択肢になったのです。

特徴としてはボックス断面を持つことでデッキ・ボトムとも直角の四隅で、つまりデッキ・ボトム・両サイドウォールの合わせて4つのパネルパート持つ構造。
そして内部のリブ構造によってボトムには少しのロッカーを与えることができる。

乗るのは難しいです、私も乗ってみましたから知ってます。
パドルは比較的安定していて、テイクオフも波が大きくなければ難しくありません。
ただし波に乗ってからはロール方向を安定させるのがなかなか至難でして、ウォールをまっすぐ滑ることに集中するサーフィンになります。
波側にちょっとよろけるとアウトラインそのままエッジですから簡単に引っかかってワイプアウトします。

プランクは、その後のアウトラインやレールそしてロッカーやスケッグの発達、ウッド素材としては最軽量のバルサを採用するボードへと進化。
1950年代半ばにデイル・ベルジーがPIGをリリースするに至って、モダン・サーフボードの時代に塗り変わったわけです。

もちろんその流れの途中でクークボックスは先にドロップしていましたが、40〜50年代でもクークボックスに乗るサーファーもちょいちょいいたわけで、つまりそれら時代遅れのボードを揶揄するけど深刻じゃあないいたずらワードとしてクークボックス、と。
ちなみにKook / クークとは、お分かりですね。
今どきはNGです。

220831_KOOKBOX.jpg

この呼び名をそのままブランド名にしたJT氏、カリフォルニアのサーフィン史の造詣についても当然以上の第1人者で、なかなかキッついシャレをかましますな。
そういえば彼がプロデュースする、Ducttape、"だくとテープでさ〜"などと言い、件の板を所有してたりしたらもう満点です。
ところがこっちは今どき。

ところで今日のこの写真の板、そういうわけでエムズの奥でうずくまっていたのですが、公開はされませんが然るべき置き場に移すことになりました。
せっかくなのでこの板をホールドする留め具も、クークじゃない本気のアイアンを奢る。

続く