カスタム・グラッシングの話です
2021.09.19

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この板、 PAVEL 9'9" MAHI HULL ですが、今日の話のサンプルに。

 たまたま先日カスタムオーダーのご相談の中、色々なアイデアをお話しする中でインレイのご希望もあってちょうどサンプルがわりにこの板をお見せしてご説明しました。
当サイトでもしばらくこのような話をしていなかったので、今日はここでも同じようなこと、紹介しましょう。
ぜひ今後のエムズでのカスタムオーダーの参考にしてください。

さてこの板、店主所有の1本ですが、なぜかこの板を作った時にシェイプが上がってみたらけっこう凝っちゃう気分にさせられたのです。
私、色々なカスタムオーダーをいただく時に役立てようと、昔からかなりたくさんのファブリックのコレクションをしてます。
しかもたまたまこの板を作った時期に、とある処でとても良いファブリックのストックと出会ってさらにいろいろ入手してファブリックのコレクションがまた増えたところだったので、自分の板のどれかに使ってみたかったのかな。

ちなみにサーフボードに使えるファブリックはいろいろあるのですが、一方でグラスワーク上使いやすい使いにくいもいろいろ。
しかもインレイの形やサイズとの兼ね合いとなると割りと自由度が限られるものなのです。

さてここではいきなりファブリック・インレイを例にとって話を始めましたが、インレイと言ってもこのようなファブリックを使うこともあれば、カラーチェンジやアブストラクト・レジンなどを入れるなどのアイデアもあります。

まずはこの板に赤と肌色、といえば簡単だけど、実を言うとアイデアの元ネタ(もちろんサーフボードでは無い)がありましてそれが全くこの配色で、言えば赤と肌色なんですがどちらもとても微妙なニュアンスだったのでその再現に苦労しました。
そこ間違っちゃうと、ダサいからね。

んで、そもそもこのモデルはロングボードサイズのフルハルがコンセプトで、スペシャルブランクスにセットしたストリンガーから始まり、リッチと相談したデザインからシェイプまでテールエリアのトーション性を強調したいところ。
そこでまずはレールラップをプログレッシブ・トーションカットで巻く。つまりこれは写真でお分かりのようにノーズはラップが大きく(幅広くですな)テールに向かうにしたがって大胆に小さく(細く)なり、テールのポイントではかなり小さくまとめる。

PAVELの板では私自身がかなりの頻度でカラーやラップカットのデザインを指示しながら立ち合うのですが、この時もある程度私が自分でテープを貼ってラップラインの雰囲気を健ちゃんに見せます。
もちろん私が貼ったテープのままではラフなので健ちゃんに雰囲気が伝わったらそれは剥がして、健ちゃんがパーフェクトに貼り直します。

で、いつも説明するように我らが山王グラッシング、棟梁である健ちゃんの飛び抜けたクオリティの作業が無くては出来得ないデザインやグラスアイデアが、私やリッチのアイデアやチョイスを実現してくれるのです。
このようなプログレッシブなラインの場合、グラスのカットも治具やカッターガイドも使えませんし、フォームに歯を入れずにビシッと決まったカットをするのは冗談抜きで至難の技。こういうのを、ホントに匠の技というのね。

さてそのレールラップが巻けたらデッキとボトムにそれぞれ肌色のピグメントでインセットをインレイします。

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次にデッキのファブリック・インレイへと進みます。
ここでさっきのとある処で見つけた生地の登場ですが、その中にこの板のベースカラーの2色に驚くほどフィットの良いヤツがあったのです。
ご覧のようにそのファブリックは同じくいくつかの赤と、ベースにはいい感じに沈んだニュアンスの肌色を持っています。柄の縦横も自然な方向で取れるサイズを持った生地です。

次にデッキとボトムをあえてイコールの番手とレイヤーでフリーラップを巻いて、その後は通常通りホットコート、そしてサンディング。
それが済んだらレールラップとデッキのインレイを囲んで、これも太さにコントラストをつけたレジンピンラインを施しますが、ここで選んだ色はデッキにインレイしたファブリックの中から一番重めの赤に揃えます。

ボトムの小さなダイアモンド・インレイはこれも私がよくやる手なんですが、カラーやファブリックを入れずにダイアモンドをレジンピンだけで。もちろん色はデッキのピンと同じ。

ちなみに山王グラスではセンターボックスにグラスカバーをするので必要の無い、ラインをやかましくするフィンパッチはこの板ではパス。

で、それらが全て済んだら両面のグロスレジンコート。
そしていよいよ空研ぎ・水研ぎ・バフでポリッシュ・フィニッシュです。
ここで実はデッキのインレイとレールとボトムのダイアモンド以外のパート、つまりデッキ・ボトムそれぞれの肌色のインセットのパートはウェットサンド・フィニッシュ。
ポリッシュのパートとウェットサンドのパートが分かれる、コンボフィニッシュなんです。

これでもざっくりなんですが、例えこの板ならばだいたいこんな流れでプロセスが進みます。

このようにインレイ(ファブリックに限らずね)などをデザインに用いるのは何もロングボードに限りません。
いろんなサイズのいろんなシェイプの板に面白いアイデアがたくさんあるものです。
もちろん割りと目立つ感じから、言われなきゃそうと知れない感じの隠し技まで、いろいろ。

今度のこの板にはちょっと雰囲気変えたデザインで巻いて欲しいな、なんてことがあればぜひご相談くださいね。

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