チャインの話
2021.09.07

PAVEL EASY WIDER / イージーワイダーにリッチ・パベルが彼の膨大なデザインメニューの引き出しから取り出して、リッチのマジカルなアップデートを施して採用した、アンダーレールのプレーニングパネルがチャインです。
パネルとレール下部・ボトムセンター部の両方に明確に現れる峰もこのデザインの大事なパートです。

210907_CHINE_2.jpg210907_CHINE_3.jpg
このデザインは70年代半ばすぎ頃、私の覚えではサンディエゴ界隈で出現しています。私の所有した中では当時製作されたBAHNEのシングルフィンにチャインを持つ板がありました。
ちなみにBAHNE / ベイン・サーフボードは日本では意外と知られていませんがサーフィン界の重鎮の一人ビル・ベインさんによるブランドで、マイク・デイフェンダッファー/パット・カレン/トニー・チャニン達とともに、あの"ザ・ヒル"の中心人物でもあります。

みなさん誰でも知っていることであれば、一度は世話になるFUのフィンボックス、また同じくFUのフィンは現在のフィンの基準です。
ビルさんはサーフィン界の発明家でもあり、やはり現在サーフィン界では世界中にポピュラーになったシェイピングマシンの開発者、そしてこれがなきゃ今は無いってくらいのスケートボードのウレタン・ウィールもビルさんの発明。
私もビルさんには80年代から随分とお世話になり、勉強させていただきました。

てなわけで、私はあの辺りがチャインのオリジンの地と思い込んでいるのですが、今度リッチに詳しく訊いてみましょうね。

さて、チャインの発想の元になったのは船(ボート)の船底形状の一つからです。いわゆる角底形状の船底をハードチャインを呼びますが、まさにそれがサーフボードにも応用されたのです。
実は船底の中心を貫く中心線・背骨もチャインと呼ばれるので、ちょいとややこしい。

210907_CHINE_1.jpg
PAVELのチャイン、アンダーレールの明確に施されるプレーニングパネルであることは上で話しましたが、同時に強弱のバリエーションがあるもののアンダーレールのコンケーブとでも言える働きをします。
サーフボードは波に乗っている間はほぼ必ずどちらかのレールがフェイスに作用しています。チャインはリフトと加速という働きを常に加えているだけでなく、サーファーがターンの動きをレールに加える操作をするとチャインそのものの形状と内側の峰が作用を強めてテーン方向へのとてもポジティブな回転性と加速を加えるのです。
もちろん同時に速くて軽いリフトをします。

PAVELイージーワイダーがモデル名の通り幅広いプラットフォームを持つ板であるのに、例えばレールtoレールが異常に軽快なのはその作用のおかげでもあります。
ちなみにチャインの内側にあるセンターセクションには、色々な形状のデザインを組み合わせることが可能で、リッチは同じモデルでもそのバラエティを用います。


さてと、今日のこの話はここ数日エイシン・ツインチンについてのお問い合わせと話題が重なっていることから取り上げました。
佐藤英進はリッチ・パベルが日本でただ一人弟子として認めて、多くを伝授し続けているクリエイティブなシェイパーです。
ですから彼がチャインをエイシン・サーフボードのデザインの中に応用することは自然な流れなのですが、英進はチャインをまずベーシックなシングルフィン・ボードに組み合わせて、そのモデル・フェザーは当初から大変完成度の高いモデルになりました。

チャインはどんなフィンセットアップとも適応性のあるデザインなので、近年多くのサーファーが関心を持つようになった比較的狭いテールエリアを持つツインフィンとの組み合わせも有効であることを証明したのが、エイシン・ツインチンです。
ただし、ツインフィンと細めなテールの組み合わせというメソッドを、"大きくなくてパワフルでも無い波"でもギクシャクせずにスムースで止まらないラインや動きを追求して、ツインチンはテールエンドにスモールスワローを採用したのです。

昨日のポストでもご案内しましたが、ツインチンはショップでサンプルボードをご覧いただけます。
気になっている方、オーダーをご検討の方、ぜひエムズでご覧くださいね。