イートンさん
2021.03.22

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MIke Eaton / マイク・イートンさんが亡くなりました。とてもお世話になりました。

ここのところ、スコット・アンダーソンさん、フィル・ベッカーさんらの訃報が続いて驚いていたところにイートンさんの訃報でした。

私はありがたいことにデイル・ベルジーをはじめとするサーフボード業界のレジェンドのみなさんに多くのことを学ばせていただき、可愛がってもいただき感謝しています。

マイク・イートンさんもその一人で、不肖、わたくしが言うのは甚だ生意気ですが、たくさんのシェイパーやサーファーに影響を与え高い評価もされていますが、それでもまだ足りないと思っています。
例えば作品にプレミアムが付いて高価になることが単に良い事とは違いますが、サーフボードの歴史においてもシーンでの現状に照らしてもイートンさんの作品たちはバリューが不釣り合いでしょう。

デイルさんもそうですが、ご本人はそういうことにそれほどの頓着はなかったように思いますが、私は少なくとも私たちサーファーの側には本当の感度が必要だろうと考えています。

色々なサーフボードについて色々なことをお話しするチャンスがあるみなさんにはお話しした事がある事ですが、いくつかイートンさんについて紹介してきましょう。

イートンさんは60年代からBING surfboardsにおいて、良いデザインを生み出し、ブランドの評価を支えたたシェイパーです。
70年代になって世がショートボードの時代になって時代の波に取り残されるブランドも少なくない中、若いキャンベル・ブラザースが持ち込だボンザーの将来性を見抜いて世に出す力になったのはイートンさんです。
ボトム前足エリアの高圧と後ろ足エリアの極低圧のコントラストを、キャンベルさん達の発想したロープロファイルかつリーンしたサイドフィンというアイデアに加えて完成させたコンセプトは、今もイートン・ボンザーに生きています。

また私がイートンさんに教わったデザインの中でも特に印象的で影響を受けたものに、ZINGER / ジンガーがあります。
イートンさんはこれについてとてもシンプルに、ジンガーはツインフィン・ボンザーと考えなさい、と教えてくれました。
ボンザーもジンガーも、先のリーンした(ジンガーはその角度が立ち気味ですが)サイドフィンを持つことに変わりないので、実際にはジンガーは4フィンなのですが、つまりセンターフィンが2つに分かれたと言う意味でツインフィン・ボンザー、であると。

このジンガー・デザインはイートン・ボンザーとともに、サーフボード・デザインの中でそれだけで一つのカテゴリーであって、その速さと動きは紛れもなく他にないもののひとつです。

LB系プラットフォームに見られるアンダーレールのダブルエッジとレールデザインにVEEのコンボなども、時代に左右されないベストのひとつです。


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GUNの隣に立つイートンさん、この板はやはり長年の盟友であるハワイのランディ・ラリックさんが催す、メモリアルなサンセット・ガンばかりを集めてテーマにするイベントに招待・依頼されて製作した1本。
イートン・ガンはサンセットにも大きな足跡があります。


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サンディエゴに移るにあたってイートンの工房に参加したジョー・ボーゲスさんは、イートンさんが2008年にサーフボード作りをリタイアする際にイートンデザインを引き継ぎましたが、例えばジンガー・デザインはジョーさんのシモンズにもバリエーションされて、現在ではOla Sim Simmonsに生き続けています。

イートンさんとジョーさん、興味深いストーリーがあります。
ジョーさんがシモンズ・デザインを生み出すきっかけは、イートンさんの友人であるジョン・エルウェルさんが古いオリジナル・シモンズのレストアをイートンさんに依頼したことに遡ります。
ジョンさんはボブ・シモンズの仲間の一人で、傷んだまま長年放置されていたバルサのオリジナル・シモンズをイートンさんに持ち込んだわけです。

イートンさんのウォーターマンぶりは幅広く、空いた時間は独自のカタマラン・ボートやパドルボード(ホントの、ね)のプロジェクトに費やしていたので、ジョンさんから依頼されたそのレストアをジョー・ボーゲスさんに振ったわけです。
そのジョーさんがレストアを機に、ジョーさんの並外れた探究力が現在のシモンズ・デザインを生むに至ったわけです。

このポストで紹介している写真の中にもあるように、カタマラン・ボートは独自なデザインを持っているだけでなくリアルなプロジェクトでしたし、パドルボードもパドルボード・レース界でも高く評価されて良いリザルトを生み出していました。

イートンさん自身もサーファー・シェイパーとしてはもちろん、パワフルなパドラーであり自ら多くのレースに参加していました。
同じくここで見てもらえる写真の中にパーティーで撮ったものがありますが、それ実はイートンさんのリタイアとハワイ島移住にあたって持たれたパーティーで、恥ずかしながら私と一緒のイートンさんのガタイの良さが分かります。

この時イートンさんは確か75歳。そうは見えません。
ついでにもう1枚は、やはり私が預からせていただいていた板を作るハンク・ワーナーさんと、G&S最盛期とそのころのスキップさん・ヒンソンさんの板にも欠かせない存在、そしてイートンさんとのリレーションの深いサム・コディさん。

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その時だったっけな、イートンさんがそのうちハワイ島の家にも工房を作るよと言うので、そしたらまた板削ってねと言うと、その時は高いぞ、と。
そのチャンスはありませんでしたが。

EATONボードをお持ちのみなさん、これからも波乗りを楽しませてもらいましょうね。