Pavel 77
2014.06.19

銘はまだありませぬ、この板。

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今年始めのパベル来日シェイプで披露した、いくつかのチャンネル・コンセプトの内の1本です。

ガンの要素も持ち合わせていますが、リッチがレース・トラッカーで提案するコンセプトのバラエティとも言えます。
大きな波はもちろん、ですから必ずしも大きい波だけがターゲットではなくデイリーな波でのサーフデザインでもあるのです。

いい波で下ろそう!、と思っていたのですが、そういうのに限って待ちきれなくてどうという事のない波でパドルしちゃったりします。

というワケで本日、私の近所の波に持ち出してみました。
一通り滑った気がする波はたった1本だけでしたが、それでもリッチのデザインした波乗りのほんのちょっとだけ、かすることができました。

台風くずれの低気圧が抜けてもたらされた今日の波は、湘南のどこかで波乗りしたサーファーはご存知のように、朝の早い時間はほどほどのブレイクで潮が上げてくるとすぐに厚くスローな波に。

まずはどうやらこれで波がもうちょいとでもマシなら、この板、波のキャッチはえらく楽でしょう。
そしてただテイクオフが早いとかっていう、テイクオフの安売りみたいなのじゃなくて、滑り出しから滑走が速い、ものすごく。

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この77(仮名ですが)の場合、6チャンネルはとても長く、板の半分ほどの所から始まりますが、その入りは実はポラード式のラウンド形状でわずかな深さから始まります。

それがディープでエッジを伴うチャンネルへと変化し、フィンの手前約10インチほどからはクリンカーへと化けて抜けます。

ターンは初めからスピードの伸びを持っていて、中盤でも途絶えずはっきりとチャンネルの伸びが現れます。
ターン後半からリリースはクリンカーのキャラクターがモロに現れて、この細身のピンテールがまったく固さを感じさせないどころか、スーパーしなやかで軽いテールで動きが明るい!

もちろん1本の波を通じて、その滑りはとても速い!

今日の波でご報告できる事はたったこのくらいのもんですが、次はちょいとどこかに持ち出してもっといい波でネタを集めてみたいものです。

この77、レーストラッカー同様、そのアウトラインは往年のシングルフィンによく見られたカタチのようで、実はまったくそうじゃない。
むしろ分かりづらいくらい(っていう言い方でいいかどうかは、?)、新しい!

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で、そこはせっかくなのでかなりヒネったカラーグラスワークを事細かくリクエストして、健ちゃんにキメてもらいました。

ごらんのようにデッキはそのまま1カラーのティントを先に巻いてボトムでカットしますが、そのカットラインも昔のカッコいいヤツよろしく、ノーズはラージラップでテールではスーパースモールラップ。

リバースインセットのボトムには、私たちが得意とするちょっとミルキーな渋いカラーをミックスして。

これらのカラーミックスはもちろん私のややこしいリクエストとアイデアを、健ちゃんの技術と根性とノウハウで初めて実現することができてるんです。簡単じゃないよ。

さらにカットラインには2本のピンラインが同じくラップにシンクロするように、太さを変化させてテールでは恐ろしいほど細密なお仕事。
で、内側のピンは外チャンネルとクロスするところで消す、と。

0619_77_4.jpg番手と織りにも凝ったグラスで積層板を造るフレキシーなフィンはリッチのオリジナル・テンプレートの一つで、こちらもウルトラ贅沢にあえてデッキの巻き色のレジンカラーで。

このお仕事はですね、見る人が見ればとんでもなく高度な技の連発でして、単に上手く仕上がってるんじゃなくてラップ際の処理なんかにもいくつもの手数が入って、なおかつそれはシェイプを反映しなくちゃいけないっていう、まるで引いて足したのに答えが違うみたいな妙技であります。

技法あれこれは、健ちゃんのシークレットです。

サーファーがサーファーを楽しませるためにサーフボードを造る、というのはこういう事です。