純粋に、波乗り
2025.09.10

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少し前にお客さん言われた一言、波乗りって言うほうがかっこいいですね、って。なるほど、カッコいいのか。

そう言えばお客さんたちとお話ししていると、割りと若い人たちとかキャリアのそれほど長くない人たちはみんな"サーフィン"って言う気がする。
いや、もちろんそれで何ひとつ違わないし、私たちもサーフィン・波乗り、どっちも発する。

ただ思い出してみると、昔、そうね40年から前だと私も私の周りでも波乗りとしか言わなかった気がする。

そこでその彼にもうちょい問うてみると、彼曰くは波乗りって言うと何やらただ波を滑るだけみたいな印象になるらしい。
いやいや、私らの口を出てくる"波乗り"は、それが今日のハイパフォーマンス・サーフィンだろうが腹這いのマットだろうがどんなサーフボードでどんなスタイルだろうが全部、波乗り。

てなお話の記憶がまだ新鮮なうちに、マリブチップで波乗りするチャンスがあった。ファンタスティック・アシッドとVELZYのコラボを果たして、今年のトリスタン・モース来日製作の1本。
私も1本欲しいところだったけれど、製作本数枠の都合で今年は諦めた。だけどよくしたものでカスタムオーダーのうちの2本までもが仲間からのもので、お願いすればいつでも波乗りさせてもらえる。

で、いよいよそのチャンスが過日、オフがオンに変わっちゃったばかりで、それでもゆる〜いからまあいいかなんだが、波はとても小さい。
スクールサイズというかボードロッカーサイズというか、そんくらい。

でもまあ潮も上げてるし一応割れてる場所はほぼ無人だし、浜まで来たしでとりあえず浮く。
そしたら何よ、乗れるじゃないの、波。ものによっちゃあ、小さな小さなフェイスを気持ち良く走れる。

実は私、もうかれこれ30年近く前にデイル・ベルジーさんにお願いしてバルサのチップを削ってもらってそいつを何度か乗った。その板はもちろんキープしたままで、それこそトリスタンも去年その板をトライしている。
そもそも乗ってみたくて作ってもらって何度か波乗りしたから、チップの波乗りはカスったほどとはいえ承知しているつもり。

マリブチップ、現在のサーフボードの実質的なルーツ。そしてここが肝心なんだが、ビフォー・マニューバーのサーフデザイン。大きな流れを見てチップ・エラの後にデイル・ベルジーが世に放ったピッグをもってアフター・マニューバーの幕開けなのだから。

マリブチップ、それはつまり純粋な波乗り。そして不思議なほどあれこれ考えさせない。
最小限のパドルで波にエントリーして滑って立つ。必要ならそんな小さい波でもエントリーのパドリング中に板をフェイスに向けるのもごく自然。
ターンはターン、ターンの基本はこうだよね、ってのが楽しい。
あとはほんのちょっとのフェイスでもこの長さ(この板は、9'10")がむしろ軽やかに、意外なほど速やかにベストの滑走スピードに達する。あえて言っちゃえばこの板、シンプルで簡単。
そのあとは波しだい。
こりゃあもうちょい波あればやばいじゃん!、よ。

この板、選択肢に加わるイメージがしづらい人もいると思うけど、驚きの大御所。
もちろん流行らせようなんて気は無いし、もっての外。

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