


前にもお話ししたかもしれないけれど、5月10日発売のBlue誌に店主がひとつ記事を書いています。これ、5回の連載でして、2回ほどお休みをはさんで今回が最終回です。
今までにもいろいろなMAGにいろいろな記事を書く機会がありましたが、今回の連載のテーマはグラスショップ(主に国内の)の近未来についての話。
地味な話題ですがみなさんも私たちも大好きなサーフィンとサーフボードに関わる視点ですので、できたら少しでも多くのみなさんに読んでいただければありがたい。
近いうちにBlue ウエブでもこの連載をアーカイブすることにもなりそうですし、このエムズのサイトでもBackdoorで連載を一通り読めるようにポストするつもりです。
ですからその連載の内容についてここでは詳しくお話ししませんが、今回の最終回の中でも少し触れた友人のビルダー・田中康則氏の板を紹介しながら今日はお伝えしましょう、と。
彼は西方に住むサーファー・シェイパー、そしてピュアな個人ビルダーで自宅にコンパクトながらサーフボード作りのためのちゃんとした工房を構えます。
すでに今年でそのスタイルでのサーフボード作りは28年目になり、自身のパーマネントな仕事を持ちながら本気のサーフボード作りのキャリアを個人として積み上げてきました。
彼とのコンタクトのきっかけも連載記事中に詳しいのでここでは割愛しますが、みなさんも想像がつくように個人ビルダーとしてそれだけの年数と本数を積み上げるのは、好きなもちろんやはり本気と情熱とブレない向上心なしには続きません。
そういうストーリーと人物ですから、彼の造る板はキャリアと共に相当なクオリティに達しています。
もちろん、フルタイムのプロフェッショナルとしての高度で濃密な環境とノウハウとの比較で見れば修正するべきポイントはあるであろうことは当然ですが、ここまで積み上げた体験をヒントにすれば今後において得られるアイデアと情報をどんどん吸収して身につけていくのは間違いありません。
さてそうであろうとなかろうと、サーフボード作りの最も高い壁、デザイン・サーフデザイン、というポイントは全ての作り手にとってエンドレスな課題。
オリジナリティ、またオリジナルそのもの、これがまたとても幅も広く奥行きも深いテーマ。
例えばどんなシェイパーでも他の誰かの作の影響を受けたりすることもあるし、それを発展させるデザイン性もあれば、一方で単なる何か印象的などこかをマネするような作風のシェイパーまでいます。
サーフボードデザイン全体を見渡せば、単に見えやすい要素についてオリジナリティを測ることもあるし、逆に簡単には見えにくい要素のオリジナリティともなると、これ簡単じゃありません。
ここんとこを深掘りするのは簡単じゃないけれど、作り手にとっても私たちにとっても、一つヒントがあります。
大きく捉えて、モダンなサーフボードの歴史を始まりを1940年代の半ば以降からとして現在までに、サーフボード・デザインの本質を発展させてきたのは本物のオリジナリティとオリジナルだということです。
そしてそういうものを生み出す特別な才能と精神を持ち合わせた、あるいは追求した作り手です。
で、それはその時々で新しいものという事では無しに、開かれた精神を持って時代を上り下りしながらデザインの質と可能性を磨き続ける作業です。
そこで何が問題か?、ちゅうとですね、そのような精神がサーフボード・デザインとサーフィンを面白くしてきたということに尽きます。
てえことは、それが途絶えればサーフボードとサーフィンが失うものがあるでしょう、と。
もちろんサーフィンはいつも楽しくて面白いことに間違いありませんから、例えばサーフィンが楽しければ板はあんまり難しいこと考えないよという志向と口喧嘩するつもりはありません。
でも、それだけじゃちょっと違うんだよね、っていうサーファーに向けて私もエムズも活動してますし、そのようなサーフボードお届けしています。
で、そこを共有するビルダーたちと結びついています。
田中氏もそういう人ですから、28年、それも濃いキャリアのさらに今後は高い壁を登りながら化けちゃうところを見学したいと思ってます。
今日紹介しているこの板は、TANAKA Custom Surfboardsを名乗る彼のラベル、7'4" Edgeboard、フィッシュテールというのもありだけど、私ここはスワローテールと呼びたい。
この板は、田中氏からお試しになってねということでお預かりしているもの。まだこいつで波乗りできていないのですが、自分の調子をもうちょいマシにしてからと思ってます。
今日はちょっと多めの写真で話をしましょう。
エッジボード(以下、エッジ)はかなり前から紹介しお届けしてきていますし、(いつものように)よくできたエッジは共通の威力を発揮します。
一方でその威力は機能性の成分に寄っていてその要素での長所が強い分、味とか感触という成分は淡白な傾向にあります。
これは、なにもネガな話ではなくてキャラクターなんである。
私も好きなもののひとつなんですが、そればっかり乗ってると、すぐについ味のあるやつで波乗りしたくなる。
で、個人的な思いなんですがエッジに味ではないとしても、個性というか何か強目の特性を付加してやるアイデアでデザインされた板も見たいと思ってたんです。
で、このエッジ、特徴がフォイルとボトムデザイン(エッジの内側の)にあります。
このデザインを思いついて選択したブランクスが持っている特長に素直に添ったフォイルと言えるもので、この板に用いたブランクスの良いキャラクターを活かすやり口と思われます。
ただしテールエリアはアウトラインと喧嘩せずに、よりFoiledで、テールデザインの選択と合わせて作者の狙いが見える、と、思う。
ボトムはノースから(浅い)ダブルinシングルコンケーブからいきなり始まり深さを増しつつ、ボードセンター(アウトラインの)・前足エリアではVEEパネルに乗っかるダブルコンケーブ化していきます。
このようなレイアウトは時々見かけるのですが、エッジボードに持ち込むと左右の2エッジ感というよりは3エッジ的な働き感が現れやすいはずなのでその辺がどうなっているのか楽しみです。
コンケーブの性質としてはボトム全域にわたってスロット的な仕込みなので、そのボード前後方向に強く働く低圧性と板の動きの組み合わせも楽しみなところ。
エッジボードはデザイン的な特性もはっきりしているので、そういう意味では制約のある部分も少なくないのですが、田中氏のこの板でのトライはレイアウトの組み立てに私は独創を感じます。
